思い立ったら義理堅い
8月8日(金)
仕事が夕方に終わり、少し時間があったので、以前に行った「プラハで生まれた世界的作家の名前をつけたブックカフェ」に行くことにした。前回飲めなかったコーヒーを飲もうと思ったのである。
古い町屋を改装したカフェは、店長のセンスが生かされた、おしゃれな店である。
お店の前まで来ると、なにやら音楽が聞こえる。スチールドラムの音だろうか。
入り口の貼り紙を見ると、今晩はこのお店で、おしゃれな音楽会が開かれるらしい。6時半開場、7時開演とあった。
ただいま夕方5時を少しまわったところ。
店内から聞こえてくるのは、そのリハーサルのようで、少し店内を覗いてみると、店長が、設営のために忙しく動き回っていた。
6時半まで待って、音楽会を聴きにお店に入るか?
私は逡巡した。
汗だくのオッサンがひとりで、小さなお店のおしゃれな音楽会を聴く、というのは、あまりにも恥ずかしい。 席がひとつ、無駄になるに違いない。
どうせ今日、この町にもう1泊するから、明日また来ることにしようか。
「店長の兄」にメールをした。
「お店の前まで行ったのですが、今晩は音楽会をやるみたいで、店内はその準備に追われているようでした。 汗だくのオッサンが1人で音楽会を聴きに行くのも恥ずかしいので引き返すことにし、明日もし時間があればリベンジしたいと思います」
まあ、何もことわることはないのだが、いちおう店の前まで来たことを、伝えようと思ったのである。
すると返事が来た。
「実は私も昨日までその町にいたんです。弟の店には5日に行きました。会えたら愉快でしたなあ。明日もし行けたら、声をかけてやってください」」
なんと!すれ違いだったのである。
どうも、いつもこういうことが多い。
しかし、これはなんとしても、明日行かなければならない。
思い立ったら義理堅いが、思い立たなければつい忘れてしまう、というのが、私の性格なのだから。
8月9日(土)、帰る日。
朝から台風の影響で、大雨洪水警報が出ていた。
(困ったなあ)
雨脚は強くなるばかりである。
インターネットで調べてみたら、11時半開店とある。
(うーむ、11時半までお店が開くのを待っていたら、この台風だ、鉄道が運休してしまうかも知れない)
ということで、「無念の撤退」を決断した。
そのことを「店長の兄」にメールで知らせた。すると、「大雨洪水警報が出ているし、そもそも店もやってない可能性もある」とのこと。
そりゃそうだ。
ずぶ濡れでおしゃれなカフェに入る、というのも、どうもうまくないし。
まあ11月にもこの町に来るから、そのときこそ、このお店でコーヒーを飲むぞ!
ということで、台風がひどくなる前に、私鉄と新幹線を乗り継いで、家路に急ぐことにした。
新幹線の中で、「同い年の盟友・Uさん」から、久々にCメールが来た。
Cメールなのに、かなり深い議論が始まった。
何回か議論の応酬があったあと、
「携帯だと長文無理!」とUさん。
そりゃそうだ。
お互いガラケーである上に、Cメールは字数制限があるので、言葉を吟味しながら文字を打たなければならない。
「クドい2人」にとっては、まどろっこしいこと甚だしい。
…が、時間を忘れてメールのやりとりをしているうちに、いつの間にか東京駅に着いていた。
東京は雨が降っておらず、涼しい風が吹いていた。
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コメント
「風の噂」で開店を知り(しかし一体どうやって?)、
探しあぐねてたどり着いてみると休業日で、
翌日もうひとつの都から舞い戻るとコーヒーが出て来ず、
職場が変わった夏に来てみると年に数回もない音楽会の準備中で、
翌日はまさかの大雨洪水警報。
という過程を経て1年がかりでコーヒーをすする瞬間、エンドマーク…ああ、じゅうぶんロードムービーになりますね(短編だけど)。映像作家でもある店主に監督してもらったらどうでしょう。ほんま見てみたいわこれ。
とにかく律儀なご来店、ありがとうございました。
投稿: がてまらひょん | 2014年8月11日 (月) 23時42分
映像作家でもある店長さんに監督してもらえたら、本望ですね。いただいたコメントで、もうほとんど脚本はできたも同然ですから。
ロードムービーというより、「彷徨もの」でしょうか。どうも私は、彷徨する話が好きなようです。
投稿: onigawaragonzou | 2014年8月13日 (水) 08時57分