喋りたおす、3日目 ~じゃんだらりん~
9月4日(木)
6時間喋りたおす仕事の3日目。
1日の授業が終わったあと、授業の感想などを書いてもらうのだが、別に感想に限らず、書きたいことがあったら書いてください、と言ったら、昨日、次のような文章を書いた学生がいた。
「私の趣味のひとつに銭湯巡りがあります。東京都は非常に多くてうらやましいです。先日は台東区にある○湯というところに行ってきました。建物自体が重要文化財になっており、非常に趣深いお風呂屋さんでした。いま住んでいる○○市は、近隣の市では一番多く銭湯が残っている地域です。最近ではスーパー銭湯が増え、町の小さなお風呂屋さんは廃業する一方です。「自分がお年寄りになったとき、いったいどのくらいの銭湯が残っているのだろう」と考えると、かなり少なくなっていると思います。なので、後輩や友人を銭湯に誘い、若いうちにできるだけ多くの銭湯に足を運ぶことが今の私の楽しみのひとつとなっています。
大学の周辺には、「○○の湯」、駅の近くでは「○之湯」があり、市営電車に乗れば「○○湯」「○○湯」などがあります。遠方より来られてもしお疲れでしたら、一度足を運んでみたらいかがでしょうか」
うーむ。授業の感想というより、ラジオ番組に寄せられたふつうのお便り、といった感じである。
私はこういう文章、つまりラジオに寄せられるふつうのお便りみたいな文章が大好きで、あまりに面白かったので、今日の授業の冒頭で紹介することにした。
夕方、授業が終わると、学生が何人か教壇のところにやってきた。
「先生、あの銭湯の話、書いたの僕です」
老練な若者を想像していたが、全然そうではなく、就活にがんばっているイマドキの4年生といった雰囲気である。
「東京とか○○市以外の銭湯にも行くの?」
「ええ。就活とかで地方都市をまわると、その町の銭湯のことをあらかじめ調べて、まわるようにしています」
その学生は銭湯について熱く語り始め、周りの友達が茶々を入れながら、会話に参加する。
「…盛り上がってるねえ」
授業が終わったころを見はからって、私を迎えに来たYさんが、この様子を見てびっくりしていた。
授業が終わったあと、学生たちが教壇の近くにやってきて、ひとしきり雑談をする、というのは、前の職場でも何度となく経験したことであった。
いま目の前にいる学生たちは、私が出会った「前の職場」の学生たちと、何一つ変わらない。
懐かしさがこみ上げてきた。
授業が終わり、ほとんど休む間もなく、3日目の宴会である。
今日は、学生が主催して、歓迎会を開いてくれるという。
学生8人と、私を含めた大人4人の、合計12人の、こぢんまりした会である。
男子学生6人、女子学生2人だが、男子学生の「女子力」が高いのも、前の職場の学生たちのことを思い出させてくれて、微笑ましい。
「こっちの方言で、『じゃんだらりん』というのがあるんですよ」
隣に座った男子学生が言った。
「『じゃんだらりん』?」
「語尾につける言葉です。『○○じゃん』というふうに」
「それは横須賀あたりでも使うね」
「あと、『そうだら』とか」
「へえ」
「『りん』は、『○○してみなさい』というような意味で使います。『お酒飲んでみりん』とか」
「『お酒飲んでみりん』か。ずいぶん可愛らしい言い方だね」
「ええ。女の子に言われると、グッと来ます。あと、『来てね』という意味で、『こりん』と言ったりします」
「へえ」
ひとしきり、この土地の言葉や食べ物の話で盛り上がる。
後半は、なぜか大人たちの間で、ピンクレディの「サウスポー」の歌の分析というのがはじまり、
「どうやら『サウスポー』で論文が書けそうだね」
という話にまとまった。聴いていた学生たちは呆気にとられていたが。
そんなこんなで、2時間半ほどの歓迎会が終わり、学生たちはカラオケへ、大人たちは、ウィスキーを飲みにと、それぞれ2次会へと向かう。
こうして、今日も夜11時過ぎまで喋りたおした。
前の職場での学生たちとの日々を、久しぶりに思い出した1日だった。
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