喋りたおす、最終日 ~歌の贈り物~
9月4日(木)
喋りたおす日、最終日。
午後の試験が終わり、一人ひとりが、答案を提出する。
なんとビックリすることに、登録者57名中、受験者は57名。つまり脱落者はゼロである。
私はそれを、1枚1枚受け取った。
ひとり、私に話しかけたそうにしている男子学生がいた。
昨日の学生主催の歓迎会に来ていた、3年生のタクロー君である。「女子力が高い男子学生」のひとりだった。
「昨日はありがとうございました」
「昨日は楽しかったねえ」と私。
「ええ。まさかピンクレディーの『サウスポー』の話題で、あんなに盛り上がるとは思いませんでした」
タクロー君は、思い出し笑いをした。
「先生はどちらからいらっしゃったんですか?」
「東京だよ」
「じゃあ、遠くからいらしたんですね…これからお帰りになるんですか?」
「うん」
「4日間ありがとうございました」
「お疲れさまでした」
タクロー君は、もう少し話したそうだったが、教室を出て行った。
続いて、昨日の歓迎会の幹事を務めた、3年生のコウヘイ君である。彼もまた、「女子力の高い男子」である。
「先生、お昼にKCKCに行かれました?」
「KCKC」とは、大学の近くにある喫茶店で、この大学の学生たちのたまり場である。「ぜひ、お昼を食べに行ってみてください」と、彼が教えてくれたのである。
「行ってきたよ」
「そうですか!アハハ。どうだったですか?よかったでしょ?」
「ランチが美味しかったね」
「それはよかったです」
「KCKC」は、コウヘイ君の行きつけのお店らしく、まるで自分の店がほめられたかのように喜んでいた。
前の職場で一緒に過ごした学生たちと、少しも変わらない。
すべての仕事が終わり、大学前の駅から私鉄で新幹線の駅に向かう。
すると「先生!」と声をかける男子学生がいた。4年生のダイキ君である。
電車に乗りながら、進路のことなど、いろいろと話をする。彼は小学校の教員をめざしているのだという。
「卒論も頑張ります」
駅で別れる。一期一会だが、今後の人生に幸あれ、である。
新幹線に乗り、今日の授業のあとに提出してもらった出席カードに目を通した。
どれも、長い感想が書かれていた。
とりわけ目を引いたのは、4年生のトモノリ君である。
最初の日に提出した出席カードで、百人一首がきっかけで和歌が好きになり、自分でも作るようになった、と書いてあった。
今度の感想には、こうあった。
「せっかくなので、自作の歌のうちの一つを書き置いておきます。数年前に作った歌です。
永遠を夢にみせてはうたかたの心を照らす君はうそ月」
そのあとに、解説が書いてあった。
「ずっと一緒にいてくれると思っていたのに、ほんの一瞬しか夢をみせてくれなかった君は、まるでその美しい姿を一瞬しか見せてはくれないうそ月のようだ、みたいな感じの意です」
和歌のプレゼントをもらったのは初めてである。
もちろんこれは、今回わざわざ作ったものではなく、以前に作った和歌を書いてくれたものであるが。
しかしそれにしても、である。
私は「女子力の高い男子」に、どうやらモテるようだ。
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