最も苛酷な3泊4日 ~雨のち晴れ~
10月15日(水)
朝10時、韓国のお客様6人をホテルまでお迎えにあがって、今日は1日、東京観光にご案内する。
朝から、あいにくの雨である。
どうしてこう、オモテにお連れする日に限って、雨が降るのか。まったく、私の日ごろの行いが悪いとしか思えない。
それに、一昨日のように、VIPと1日中、相合い傘では、VIPにも申し訳ないと思い、傘を買ってお渡しすることにした。
1時間半かけて、上野に到着。
ここで1時間ほど自由時間をとり、自由に見学していただくことにしたのだが、VIPが私におっしゃった。
「『○○○』という本を、手に入れたいのだが」
『○○○』というのは、日本の本である。昨日のレセプションの時に、どなたかに薦められた本らしい。
上野公園では、さすがにその本は売っていない。
「わかりました。何とか探してみます」と私。VIPは、私に書籍代を渡した。
さっそく、東京駅前の丸善に電話で聞いてみたところ、「在庫があります」という。
私は急いで、上野公園から、東京駅に向かい、丸善で、その本を購入した。
ふたたび上野公園に戻り、集合場所で、その本をVIPにお渡しした。
「おお!あったのか!ありがとう。こんどメシでもごちそうしないとな」
上野で昼食をすませたあと、午後は浅草に向かうことにした。
するとこんどは、随行員の方が
「昨日、『×××』という本を紹介されたので、手に入れたいのですが」
「わかりました。何とか探してみます」
浅草で、自由時間を1時間ほどとって、見学していただいている間、私は浅草じゅうの本屋を駆けまわり、運がいいことに、その本を見つけたのだった。
集合場所の雷門で、その本をその方にお渡しした。
「私のためにわざわざ買ってきてくださったんですか?ありがとうございます」
雨の中、東京観光は、いろいろとミスがあったが、無事に終わり、また1時間半ほどかけて、ホテルに戻った。
今日は、日本での最後の夜である。
VIPが、「鍋が食べたい」とおっしゃったので、ホテル近くの海鮮居酒屋で、海鮮鍋を食べながら、お酒を飲むことになった。
3日間もずーっと一緒にいたので、もう話題も尽きてきたのだが、VIPが、おもむろにおっしゃった。
「この間、いろいろとお骨折りしてくれた3人に、挨拶をしてもらおう」
突然のご指名である。
私は韓国語で、簡単なお礼の言葉を述べた。
同僚2人も、もちろん韓国語で同様に感謝の言葉を述べた。
すると、VIPがおっしゃった。
「君たちのいまの挨拶が、本当の開幕の挨拶だ」
私はそのお言葉に、ちょっとうるっときた。
和やかな雰囲気で1次会が終わり、例によって2次会である。
さすがにVIPはお疲れのご様子で、10時過ぎにホテルにお戻りになった。
残ったのは、私たち3人と、VIPの随行員の方おひとりの、計4人である。
私も、さすがに疲れたので、先に失礼することにし、10時40分頃に店を出て家に戻った。
10月16日(木)
昨日の雨はあがっていた。
いよいよ、VIPの帰国の日である。
出発は午前10時半だが、少し早めにホテルに到着すると、ロビーで同僚がグッタリしていた。
「どうしたんです?」
と聞くと、
「あのあと、深夜3時まで飲んでいたんです。で、結局家に帰れずに、ホテルに泊まることに…」
「そうだったんですか…」
なんと、私が帰ったあとも、若い随行員の方と、2次会が続いていたらしい。
午前10時半にホテルを出発し、11時半に空港に着いた。
チェックインの手続きを終え、いよいよお別れである。
「お疲れさん」とVIP。
「ありがとうございました」
VIPや随行員の方々と固い握手をして、お別れした。
「お疲れさまでした」
「無事終わってよかったです」
「本当によかったです」
午前11時半すぎ。私たちの疲労は極限に達し、言葉少なに、空港で解散した。(完)
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