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最も苛酷な3泊4日 ~1枚の色紙~

10月14日(火)

この日は朝から開幕式のため目のまわるような忙しさで、職場の自分の仕事部屋に立ち寄る時間すらなかった。

開幕式が終わった夕方、少しだけ時間ができたので、職場のメールボックスをのぞいてみると、私宛てに、速達の封筒が届いていた。「前の職場」からである。

(何だろう?)

封筒を開けてみると、1枚の色紙が入っていた。

(……?)

同封されていた書面によれば、18日(土)、つまり今週の土曜日に、震災の起こった年(2011年)に卒業式ができなかった卒業生たちのために、「前の職場」が卒業式をあらためておこなうのだという。

それじたい、初耳である。

ついては、その「卒業式」に参加する卒業生に色紙を渡したいので、指導教員である私に、その学生に対するメッセージを書いて、送り返してほしい、というのである。

色紙を見ると、色紙の上半分に、私の指導学生であるA君の名前と、部長先生のメッセージが印刷されたシールがデカデカと貼ってある。

どうやら、A君に渡す色紙、ということらしい。私のメッセージは、部長先生のメッセージが貼ってあるシールの下の余白部分に書け、ということらしい。

締切を見て、驚いた。

「10月16日(木)必着でお願いします」

えええええぇぇぇぇぇ!!

いまは14日の夕方である。

前日の13日は、3連休の休日だったので、この封書が届いたのは、今日、すなわち14日であることは間違いない。

それを、16日に届くように送り返すには、遅くとも明日(15日)の早い時間までに、メッセージを書いて投函しなければならない。

どういうこっちゃ???

しかも、である。

私がその年度に指導した学生は、A君だけではない。5,6人はいたはずである。

ほかの人たちに渡す色紙は、ないのだろうか???

状況がまったく飲み込めないのだ。

あらためて考え直してみるに、おそらくA君だけが、18日の「卒業式」に出席するので、当日の出席者にだけ色紙を渡すということなのだろう。

じゃあ、「卒業式」に出席できなかった人たちには、どうするのだろう?

それにしても、である。

何の前触れもなく、いきなり色紙が送りつけられ、「ここにメッセージを書いて、至急送り返してくれ」とは、ずいぶん乱暴な話である。

ふつうならば、事前に説明があり、何日も前に色紙が送られてきてしかるべしである。

とくに職場を離れてしまった私には、まったく状況が飲み込めないのだ。

へそ曲がりの私は、考えた。

はは~ん、さては、思いつきだな、と。

直前になって、「色紙を渡す」なんてことを思いついちゃって、それで、こんなギリギリになって送られてきたんだろうな。

震災の年の2011年3月、卒業式はおこなわれなかった。

それを、あらためておこなう、ということは、とてもすばらしいことだと思う。

本来ならば、この趣旨に手放しで賛同すべきであろう。

色紙を渡すことも、いいアイデアだと思う(ただし、指導教員からのメッセージが、うれしいものかどうかは別である)。

だが私は、どこか解せないところがあった。

なんとなく、上から強制されているような気がしたのだ。

私は、上から強制されることが、なによりも嫌いなのである。

しかも、この日は、朝から忙しくて、気持ちにまったく余裕がない。

このあともすぐに、レセプションが待っていて、何時に終わるかわからない。

そもそも、この日私が、メールボックスに入っていた速達の封筒に気づかなかったら、どうするつもりだったのだろう?

とりあえず私は、色紙と返信用封筒を鞄の中に入れ、職場を出て、レセプション会場に向かった。

この日、深夜2時まで、韓国のお客様におつきあいし、ホテルに泊まったというのは、先に書いたとおりである。

色紙にメッセージを書く時間は、まったくなかったのである。

翌朝、早めに起きて、ホテルの部屋でメッセージを書いた。

だがあまりに疲れていて、気のきいた言葉が思い浮かばない。

私は、心に余裕がない、といういまの気持ちをありのままに、A君にメッセージを書いた。

A君の代の卒業生たちとは、卒業式は行われなかったものの、卒業旅行として一緒に温泉に行ったし、卒業して1年後も、みんなで温泉に行った。

その意味では、すでに十分すぎる思い出が、私の中にも、おそらく彼らの中にも、あっただろう。

だからいまさら、「卒業おめでとう」というのも、気恥ずかしい。

それに、もしそのメッセージを言うならば、A君だけでなく、すべての卒業生に言うべきであろう。

へそ曲がりの私は、そんな気持ちを、隠すことなく、A君宛ての色紙に書いたのである。

およそ、卒業祝いのメッセージとはほど遠いものになってしまった。

A君、怒るかなあ。

まあ、私がへそ曲がりの人間だということは、A君もわかっているだろうから、笑って許してくれるだろう。

書き終わって、急いでポストに投函したが、間に合ったのかどうかは、定かではない。(続く)

〔訂正〕

上の記事で、「卒業式」で色紙を渡すのは、直前に思いついたのではないか、と書きましたが、A君が出席の申し込みをだいぶ遅れてから出したために、私のところに色紙が送られてきたのもギリギリになったようです。お詫びして訂正いたします。

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