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最も苛酷な3泊4日 ~VIPと相合い傘~

10月15日(水)、いよいよ展覧会が開幕した。

ここまで至るのに、筆舌に尽くしがたい道のりがあったが、そんなことを書いたところで、他人にとってはどうということはないのだろう。

13日(月)から3泊4日で、このたびの展覧会に全面的にご協力いただいた韓国のVIP3名、随行員3名の計6名が、14日(火)の開幕式に合わせておいでになることになった。

私の仕事は、ほかの同僚2人と一緒に、この6名のお客様のアテンドをすることである。

13日(土)のお昼に空港に到着されたお客様をお迎えするところから、16日(木)のお昼に空港から出発されるのをお見送りするまで、気を抜くことなく、ずーっとアテンドしなければならない。

それが、私に課された仕事である。

13日は、あいにく台風の影響で、雨が降っていた。

お昼、6名のうちの4名が空港に到着することになっていた。私ともう1人の同僚が、お客様を空港でお迎えして、夕方の懇親会までの間、車で移動して、ある美術館にご案内することになった。

しかし、あっという間に展示を見終わってしまった。

時計を見たら、まだ3時にもなっていない。

(困ったな…)

すっかり目論見がはずれてしまった。これでは間がもたないではないか。

「どこか行きたいところはございませんか?」

と、VIPにうかがったところ、

「そうねえ。初秋の雰囲気が感じられる、風情のあるところがいい」

「……」

私は困ってしまった。かなり漠然としたご希望である。

するとVIPが続けた。

「たとえば、古いお寺とか」

古いお寺、と聞いて、空港の近くに古くて大きなお寺があることを思いだし、ふたたび車に乗って、空港近くのお寺に向かった。

だが外は大雨である。雨の中でVIPを歩かせるのはしのびなかったが、ほかの選択肢がなかったのだから仕方がない。

車を降りて、傘をさして歩くことにした。

だがここで驚くべきことが。

VIPは、傘を持っていないのである。

台風が来ていることはわかっているはずなのだが、にもかかわらず、傘をお持ちになっていないのだ。理由は「重いから」だという。

なるほど、VIPは、傘を持たないのか。

VIPと相合い傘をしながら、お寺をご案内することになった。

雨で足もとも悪いし、さぞ不快だろうと思いきや、そんなことは全然なかった。さきほどの美術館よりも反応がよかった。おそらく、お寺の古い建物が、VIPの関心を呼んだのだろう。

(よかった。これで間がもったぞ)

夕方5時過ぎ、車でホテルに向かい、チェックインのお手伝いをしたあと、夜7時からはホテルの近くのお店で、お客様を囲んで20人ほどの懇親会である。

お昼においでにならなかった2名のお客様も、夕方の飛行機で空港に到着し、ここで合流した。

テーブルは4つに分かれているので、それぞれのテーブルに通訳がはりつく。

1つのテーブルを任されるのはプレッシャーだったが、お客様が退屈しないよう、必死に話題をつないでいった。

夜9時半すぎに。懇親会が終了。

お客様が「2次会に行こう」と言われる可能性も想定していたが、みなさんそのままホテルに戻られた。

「今日は、2次会ないみたいですね」

「そうですね」

2次会がないことを同僚と確認した。

VIP担当の3人は、お客様が3泊している間、同じホテルに、それぞれ1泊することになっていた。宿直のようなものである。この日は、同僚のうちの1人がホテルに泊まり、翌日が、私の宿直の日であった。

初日が終わり、ホッとして帰途についた。

明日は、開幕式とレセプション。いよいよ本番である。(続く)

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