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動機の鑑定

テレビドラマ「古畑任三郎」第2シリーズ「動機の鑑定」。

Pic_s古美術商を営む春峯堂主人(澤村藤十郎)は、美術館の館長(角野卓造)と組んで、美術館が持つ「慶長の壷」を自らの鑑定でむりやり国宝に仕立てあげるが、その壺は、陶芸家・川北百漢が春峯堂主人のこれまでの悪事を告発するために作った贋作の壺だった。このことが世間に公表されることを恐れた春峯堂主人と館長は、川北百漢を殺害し、さらに春峯堂主人は、弱気になり自首を切り出した館長を、「慶長の壺」で、撲殺するのである。

このとき、凶器として使われた「慶長の壺」は、本物の壺だったのか?贋作の壺だったのか?

館長殺害当時、犯行現場には、本物の壺と贋作の壺が並んでいた。

春峯堂主人はあろうことか、国宝級の本物の壺で、館長を撲殺したのである。

かくして国宝級の「壺」は、凶器に使われることによりその生命を失い、贋作だけが、この世に残ることになった。

見紛うばかりの、2つの壺。本物の壺と、贋作の壺。

春峯堂主人は、館長を撲殺するためにとっさに壺を手に取ったとき、本物と贋作を見間違えたのだろうか?

そうではなかった。

自供した春峯堂主人が、古畑に最後に言ったセリフが、印象的である。

「古畑さん、あなたひとつ間違いを犯してますよ。あの時私には分かってました・・・どっちが本物か。知っていて、あえて本物で殴ったんです。要は何が大事で何が大事でないかということです。

なるほど、慶長の壷には確かに歴史があります。しかし裏を返せばただの古い壷です。それにひきかえて、いまひとつは現代最高の陶芸家が焼いた壺です。私1人を陥れるために、私1人のために、川北百漢はあの壺を焼いたんです。それを考えれば、どちらを犠牲にするかは・・・

物の価値というのはそういうものなんですよ、古畑さん」

不特定多数の人たちが評価するモノだけが、価値のあるものとは限らない。

自分ひとりのために作られたものが、その人にとって価値のあるものなのである。

それはモノだけでなく、文章でも同じである。

書くのに費やした時間もまた、その価値に含まれる。

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コメント

あれは私にとっても最も印象的な回です。

投稿: | 2015年6月26日 (金) 16時54分

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