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想像力と数百円

めったに会えない友人から、かなり最近忙しそうな感じの近況報告を伝えたメールが来たのだが、その最後に、

「いろいろありますが、私は元気です」

と結んでいて、そのひと言で、なんとなく安心した。

そういえばむかし、

「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです」

という映画のキャッチコピーがあったよなあ。あれは何の映画だったっけなあ、と記憶をたどっていくと、宮崎駿監督の「魔女の宅急便」のキャッチコピーだったことを思い出した。

映画のことは忘れちゃったけど、このキャッチコピーだけは覚えていたのである。

このキャッチコピー、誰が考えたんだろうと思って調べてみると、糸井重里さんだった。

だいたい、印象に残っているキャッチコピーをたどってみると、糸井さんにたどり着くことが多い。

似たような経験として、たとえば、子どもの頃に見たウルトラマンやウルトラセブンのエピソードで、妙に印象に残っているエピソードをあとで調べてみると、そのほとんどが実昭寺昭雄が演出した回のものだった、ということが、私の場合にはある。

自分の心に引っかかる「作風」というものが、やはりあるのだろう。

いやそもそも、糸井さんや実昭寺監督が、心に引っかかる作品を残す名人なのだ、と思う。

高校時代、コピーライターに憧れたりして、雑誌『広告批評』を、かなり熱心に読んでいた。

以前にも書いたことがあるが、糸井さんがコピーライターに見切りをつけた頃から、広告業界は、構造的に大きく変わりはじめた。

それからというもの、心に引っかかるキャッチコピーは、少なくとも私にとっては、すっかりなくなってしまったように思う。

私が好きな糸井さんのキャッチコピーは、以前に紹介したとおりだが、

「想像力と数百円」(新潮文庫)

も、そうとう好きである。

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