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「なぐり」は永遠のテーマである

11月25日(火)

今の職場では、いろいろな業者の人と仕事をすることが多い。いずれも、職人肌の人たちである。

昨日(23日)と一昨日(24日)は、うちの職場で一般の人々を対象とした体験イベントをおこなった。年に数回一緒に仕事をしている職人さんたちによる、「昔ながらの印刷技術」を体験するイベントである。

かなり手の込んだ印刷技術なので、最初に職人さんが、その印刷技術について一般参加者に説明してくれるのだが、これが実におもしろい。

何より、自分の仕事について、実に楽しそうに喋っているのだ。

昔ながらの印刷技術のことを、職人さん自身が誇りに思っている証拠である。それでいて、最新の印刷技術のことを決して悪く言わない。それぞれによさがあるという。決して驕り高ぶってはいないが、一方でその道30年の自信は揺らがない。

私が職人さんに憧れるのは、謙虚にかつ誇らしく、自分の仕事を楽しそうに語れるからだろう。

与えられた仕事を、職人になったつもりで取り組めば、どんな仕事も楽しくなるのではないか、とさえ思えてくる。

今日は今日で、別の職種の職人肌の業者と仕事をする。

「俺達のような仕事をしている人間にとっては、『なぐり(カナヅチ)』は永遠のテーマなんスよ」

職人肌のSさんが私に言った。

なにやら深そうな言葉だが、どういうことかわからない。

「どういうことですか?」と聞くと、

「なかなか自分に合う『なぐり』が見つからなくて、ずっと探し続けているということです」という。

「なるほど」

「今のところ、いま使ってるコレがいちばん使い心地がいいんですがね。でも、この先、もっといい『なぐり』に出会えるかも知れない。それを探し続けているんです」

そういうと、Sさんが使っている「なぐり」を持たせてくれた。

「軽すぎてもだめだし、重すぎてもだめです」

「なるほど」

まるでワインの味をきわめるが如くである。

「むかし、舞台美術をやっていたことがありましてね。そのときは、セットをバラす(壊す)ことが多かったから、大きめの「なぐり」を使っていたんです」

「なるほど、目的によって使う『なぐり』も違ってくるんですね」

「そうです。先輩のOさんなんかは、大きい『なぐり』と小さい『なぐり』の、二刀流ですよ」

まるで宮本武蔵の如くである。

そう言われてあらためて見ると、人によって使っている「なぐり」の種類が違うことに気づく。人それぞれ、使いやすさというものがあるのだろう。

「むかしは、親方に『釘を打ち込むときは3発で決めろ』とよくいわれたもんです」

まるで狙撃手(スナイパー)の如くである。

「なぐり」1つでも、奥が深いのだ。

「『なぐり』は永遠のテーマである」

いい言葉だ。

大言壮語で「上から目線」の説教くさい言葉なんかよりも、こういう言葉のほうがグッと来る。

こういう言葉ばかりを集めて、本にしたいくらいだ。

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