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リスナー第1号

「ラジオ番組、誰も聞いてなかったんじゃないだろうか」と書いたが、そんなことはないようで、まったく自分の「かまってちゃん」ぶりには呆れるばかりである。

12月29日(月)

仕事納めも終わり、誰もいない職場に行く。職場に顔を出すのは10日ぶりである。

自分のメールボックスにメモが貼られていた。不在の時には、「○○様という方からお電話が来ました」と、事務補佐員さんがメモを書いて貼ってくれるのである。

メモには「○○市で大工をしておられる○○様という方からお電話がありました。折り返しお電話いただければとのことでした」と書いてあった。日付が「12月22日」とあったので、先週の月曜日に電話が来たらしい。

○○市、というのは、私がこの3月まで11年間住んでいた町である。大工の○○さん、という方は、まったく面識がない。

とりあえずメモに書かれている電話番号に電話をかけてみると、おじいさん、といった感じの方が電話に出た。

「もしもし」

「私、鬼瓦と申します。先週、お電話いただいたようなんですが」

「ああ、先生ですか!わざわざお電話いただき、ありがとうございます」

ここまでは、なんとか聞き取れた。

「○△×※◇■♪…」

ここから先の自己紹介のくだりが、聞き取れない。

たいへん失礼ながら、訛りがきつすぎて、何をおっしゃっているのか、まるでわからないのである。

私は14年間もその地に住んでいたのにもかかわらず、ネイティブの方のお話になる言葉が、まるで聞き取れず、ショックを受けた。

いったい私は、14年間、何をしてきたんだろうと、ひどく落ちこんだ。

かといって、

「え?何です?」

と聞き返すのも失礼である。

しかしながら、断片的に聞き取れた中からお話の内容を何とか復元してみると、

「たまたまラジオを聴いていたら、自分の仕事にかかわることが話題に出ていて、ラジオを最後まで聞いたら、お話しされていたのが鬼瓦先生だということがわかった。そこで放送局に問い合わせて、ラジオで話されていた内容にかかわる本のタイトルや出版社を聴き出し、さっそく3冊買い求めた」

というようなものであった。

「ええぇぇっ???3冊もお買い求めになったんですか?」

「はい、そうです。知り合いに配ろうと思って」

何と!ラジオを聴いたことがきっかけで私の本の存在を知り、お一人で3冊も買われたというのである!

ラジオ効果恐るべし!である。

「ありがとうございます」と私が言うと、

「いえ、こちらこそありがとうございます。自分の仕事にかかわることが取りあげられてとてもうれしいです。棟梁も喜んでおりました」

「年明けに、仕事で○○市にお邪魔しますので、昼間に時間をみつけて、お目にかかってお話をうかがいたいと思いますがいかがでしょうか」私は提案した。

「願ってもないことです。棟梁にも伝えておきます」

というわけで、年明けに、実際にお会いしてお話をうかがえるかも知れない。

言ってみれば、「ラジオリスナー」に会いに行く、というわけである。

知り合いではなく純粋な聴取者であるということからすれば、私にとっては記念すべき「リスナー第1号」である。

実際にラジオを真剣に聴いてくれた人がいたのだな、と、あらためて感激した。

しかも、「リスナー第1号」は、大工さんである。私の祖父は大工をしていたが、私が幼い頃に亡くなったので、その仕事ぶりを見たことがない。でもこうしていま、研究を通じて大工さんと関わりを持つというのは、祖父の仕事をかいま見られるような気がして、じつに因縁めいている。

だが心配なのは、お会いしたときに私がちゃんとお話を聞き取れるか?ということである。

14年間も住んでいたにもかかわらず、ネイティブの言葉を聞き取れなかったのは、かえすがえすも情けなかった。

そして不思議なのは、あの電話を最初に受けた事務補佐員さんである。

彼女は、どのていど電話の内容を聞き取れたのだろうか?

年明けに職場に顔を出したら、聞いてみることにしよう。

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