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一生どうでしょうできません!

(今日のタイトルは、「レインボーブリッジ封鎖できません!」という感じで声に出して読んでみてください)

12月21日(日)

昨日に引き続き、氷点下のソウルをさまよい歩く。

例によって誰も話し相手がいないので、どうでもいいことばかり頭に浮かんでしまう。

北海道のテレビ局が製作していた「水曜どうでしょう」という番組が好きだった。

大泉洋、鈴井貴之という北海道出身のタレントと、藤村忠寿、嬉野雅道という放送局の二人のディレクター、計4人が、国内外を珍道中するという旅番組である。

出演者、スタッフ合わせて4人しかいないので、自然とこの4人は結束が固まり、視聴者は彼らがときに罵りあいながら、ときに笑いあいながら旅を続ける姿を、ドキュメンタリーを見るがごとく見届けてきたのである。いつしか視聴者も、その旅仲間のような感じになっていった。

私も、彼らが旅をした場所に、「巡礼」と称してよく訪れたものだ。

2002年9月に8年間続いた番組が終了することが決まったとき、この4人は、

「一生どうでしょうします!」

と宣言した。

番組は終了するけれども、僕らはこれからも変わらない。再放送を続けたり、過去の放送をDVDに再編集し、出演陣の副音声(オーディオコメンタリー)をつけて販売したり、時折「新作」と称して新たなロケに出かけて特番を放送したり、何より毎日、番組のホームページの日記を更新するので、「水曜どうでしょう」は僕らが死ぬまで続くのだ、という宣言である。

実際、番組終了後も、人気が衰えることはなかった。

DVDは記録的に売り上げを伸ばし、番組を回顧するイベントを企画すると、多くの人が集まるなど、異様な盛り上がりを見せていた。

私もご多分に漏れず、毎回、DVDを予約して購入したクチである。番組ホームページも頻繁にチェックしていた。

しかし、である。

12年たった今、今も出続けている番組DVDを、とうとう買わなくなってしまった。

番組ホームページも、全く見なくなってしまった。

DVDを見直すようなことも、ほとんどなくなった。

10年以上もの間、少しずつ発売され続けているDVD。映像じたいは過去の放送分なのだが、副音声(オーディオコメンタリー)は、DVD製作時点のものである。

ごく最近出されたDVDの副音声を聞いてみると、何となく、番組をやっていたころの4人の関係性とは微妙に異なってきているようにも思う。

お互い、少し気を使いあっているというか。

一人ひとりの考え方も、番組当時とはかなり異なってきていると思う。あまり変わらないのは、嬉野ディレクターくらいだろうか。

少しずつ考え方が変わっていっている出演陣の話を、戸惑いながら聴いてしまう。

私自身も「一生どうでしょうします!」と誓ったはずなのだが、その誓いは、はたして本当に一生続くのか、わからなくなってきた。

3年ほど前、やはり「水曜どうでしょう」の熱烈なファンだったという同業の人と話したときに、

「え?まだDVD買い続けてるんですか?僕はとっくに買わなくなってしまいましたよ」

と、すっかり冷めているようだった。

やはり、一生どうでしょうするのは難しいようだ。

考えてみれば、人間のテンションが時とともに変わるのなど、あたりまえのことである。

番組終了時の心の高揚感と、そこから時が経って、それぞれが別の道を歩みはじめてからのテンションが異なるのはあたりまえである。

出演陣の4人のテンションも、常に一緒というわけではない。別の仕事にかかりきりになれば、お互いの思いが平等であり続けるというわけにはいかない。

誰かにとっては思い入れが強くても、別の誰かにとっては優先順位が下がる、ということは、十分にありうることなのである。

しかしそれは、当然のことである。

同じテンションのまま「一生どうでしょうします」というわけには、いかないのだ。

では、私たちは「一生どうでしょうできない」のだろうか?

いや、そういうことではない。

ふだんは忘れていても、またいつか、心が高揚することがあるだろう。

重要なのは、またいつか心が高揚できるかどうか、である。すっかり忘れることなく、である。

そのとき私たちは初めて、「一生どうでしょうします!」と胸を張って言うことができるのだ!

そして賢明な読者ならばお気づきのように、こうしたことは、たんに番組に限ったことではないことを知るのである。

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