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洋食屋さん

12月14日(日)

若い世代は知らないと思うが、シティーボーイズというコントグループがある。

大竹まこと、きたろう、斉木しげるのオッサン3人組のコントグループである。

斉木しげるときたろうは、他人をイラッとさせるオッサンを演じさせたら、右に出るものがいない。

その二人に対して、「常識人」である大竹まことがツッコミを入れる。

この掛け合いが絶妙である。

私の大好きなコントに、「洋食屋さん」というのがある。

舞台は港町の小さな洋食屋さん。

そこは、やたらと陽気なシェフ(斉木しげる)が一人で店を切り盛りしている。

このシェフは、他人をイラッとさせることこの上ない。

厨房から出てくるたびに、いちいち大声で歌を歌うのである。

「わ~た~し~は、よ~きな~、ようしょくやさんっ!」

みたいな感じで。

ある日の夜遅く、その店に、二人の客が現れる。

ひとりは、気ままな一人旅の青年(きたろう)。

もうひとりは、疲れ果てた営業マン(大竹まこと)。

シェフは一人旅の青年に「ぬれねずみさん」とあだ名をつけ、出張中の営業マンに「グッタリさん」とあだ名をつけ、客をあだ名で呼ぼうとする。これがまた、ウザイのである。

とくに不機嫌なのは、疲れ果てた出張中の営業マンである。

腹ぺこなので、とにかく腹を満たせばよい、という彼は、いちいち大げさな行動を取り、そのたびに手が止まるシェフに、イライラし続けるのである。

一方の一人旅の青年は、他人との会話を楽しみたいタイプのようで、シェフのお喋りに楽しそうにつきあう。

ぬれねずみさん(一人旅の青年)が、シェフに聞く。

「あのう…あそこの、窓側の席に移ってもいいですか?あの、花が飾ってあるテーブルです」

店の中でいちばん眺めのいい席を指さす。

「…で、でも、こちらの方が暖かいですよ」とシェフ。

「でも、あちらの方が、港の灯りがよく見えるかもと…」

「申し訳ございません。この席は、予約席なんです」

「予約?こんな時間に?」

「ええ」

「どんなお客さんなんです?」

「え?」ニヤっとするシェフ。

「いや、どんな人かなあと思って…」

「どんな人だとお思いになりますか?」得意げに質問で返すシェフ。どうやら聞いてほしそうだ。

「そうですねえ…。きれいな女の人って感じがしますけど」

「ちょっと惜しいな」

「じゃあ…このあたりに住んでいる年老いたご夫婦で、むかしはフランスに住んでいたとか」

「それも、違います」

「じゃあいったい、どんなお客さんなんですか?」

「『思い出』っていう名のお客さんです」

ここで、この会話の一部始終を聞いていたグッタリさん(営業マン)のイライラが、頂点に達する。

「楽しい会話に割り込んで悪いんだけどさぁ!…メニューまだかな!」

会話に没頭しすぎて、メニューをなかなか取りに行かない。

とにかく、一事が万事、こんな調子なのである。

すったもんだあって、ようやく料理が出てきた。

「いかがですか」とシェフがぬれねずみさんに聞く。

「おいしいですよ」

「それはよかった」

「こんなに温まるシチューは初めてですよ」

「ちょっと、塩辛くありません?」

「いや、美味しいですよ。どうしてです?」

「今夜のシチューには、ちょっと涙が入ったかも知れない」

「涙?」

「あ、いえ、お早くどうぞ、ね。恋もシチューも冷めないうちがいちばんです」

「あ、わかりました。あちらの席の方を待ってらっしゃるんですね」

「…はい」

「よろしかったらお話を聞かせてい…」

「そうですか」ぬれねずみさんの質問にかぶせ気味にそう言って、シェフは待ってましたとばかりにうれしそうに語り始める。彼は聞いてほしかったのだ。

「あの席は、10年前に別れた恋人のためにとってあります。今日は彼女の誕生日なんです。この10年間、私は待ち続けました。きっと彼女はこの店を訪ねてくれるに違いない。…でももうあきらめます。どうやら今夜もキャンセルされちゃったみたいだ。…お客さん、こちらの席に移りませんか?港の景色もよーく見えますよ」

「いや、空けときましょう」時計を見ながらぬれねずみさんが言う。「12時まで、まだあと1時間あるじゃありませんか」

「ああ、そうでした。ごめんなさい。しんみりさせてしまいましたね」

そう言ってグッタリさんの肩をたたくシェフ。自分は無関係だと思っていた会話に巻き込まれたグッタリさんは、不意に肩をたたかれ、思わず料理を吹き出す。

「わ~た~し~は、よ~きな~、ようしょくやさんっ!」

元気を奮い立たせるように歌いながら厨房に戻るシェフ。

さすがに呆れる二人。

厨房に入ったシェフを見届けたあと、ぬれねずみさんがグッタリさんに聞く。

「美味しいですか?」

「ものすごく不味いですよ」

「でしょう?私のもです」

ここでコントが終わり、暗転。

斉木しげるときたろうの、一見センチメンタルに聞こえるけれど、周りから見たらイラッとするような、それでいてバカバカしい会話がたまらなく面白い。そしてそれを冷静にとらえる大竹まことのツッコミも最高である。

私はたぶん、若いころから憧れてきたのだ。

この「センチメンタリズム」と「バカバカしさ」と「冷静さ」を表現できるオッサンたちに、である。

…さて、私が全力で取り組んできた、2カ月にわたる職場のイベントも、ついに最終日を迎えました。

時間を作ってわざわざ見に来てくださった方、本当にありがとうございました。

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