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とんぱち

1月6日(火)

私をよく知る人はおわかりのように、私の悪い癖は、「人の話を聞いて、すぐにその気になる」ということである。

で、いつも家族に叱られる。

今日も5時間近くトラックに乗り続けたが、何もすることがないので、トラック野郎のSさんと話をする。

どういうはずみか、「ダーツ」の話になった。

Sさんの最近の趣味は、ダーツらしい。

「ダーツは面白いですよ。スノボーだとか、バイクだとか、今までいろんなことを趣味にしてきましたけど、ダーツがいちばんお金がかかりません」

「そうですか。ダーツって、どこでやるんです?」

「ダーツバーですよ」

「ダーツバー?」

「ええ、みんなとダーツを真剣に競うと、すごい面白いです」

「そうですか」

私はいままで、ダーツのダの字もしたことがないのだ。

「やるんだったら、マイダーツが必要ですね」

「マイダーツ?」

どうやら、ダーツは奥が深いらしい。

ダーツ。あれが実は、4つの部位に分かれていることを、初めて知った。

ボードに刺さる針みたいな先っちょの部分を「ティップ」という。

ちなみに、堅い針と、そうでないソフトなものがあるそうで、前者をハードダーツ、後者をソフトダーツというのだそうだ。

野球でたとえれば、硬式野球と軟式野球のようなものか。

「僕はソフトダーツ派ですけどね」とSさん。

「つまり、軟式野球ということですね」

「まあそういうことです」

そして、「持つ部分」。

これを「バレル」というが、ここがいちばん大事な部分で、自分の感覚に合わせて、いいものを選ぶ必要があるという。

「いいバレルを選べば、それだけ当たりやすいです」

「そうですか」

「タングステンの90とか、いいんじゃないでしょうかねえ。僕は最初、タングステンの80のやつを使ってました」

もはや、この時点でよくわからない。どうやら「タングステン」が多く含まれているバレルが、いいバレルらしい。

で、「持つところ」のやや後ろの部分を「シャフト」という。

そして、羽みたいな部分を「フライト」というのだそうだ。

この4つの部位を組み合わせて、自分に合ったダーツにする。

ダーツは3回投げて1セットなので、常に3本持っていなければならない。

「ダーツは、練習すればするほど、上達します」

「なるほど、練習は裏切らないということですね」

「そうです。それに、人間性が出ます」

「というと?」

「たとえば、『とんぱち』を狙ったとします」

「とんぱち?」

とんかつ屋の名前かと思った。

「1ラウンド内で20のトリプルに3本入ることですよ。そうなると合計点数は180点でしょう」

「はあ」

「100点のことをダーツの世界では『トン』というので、180点でトンパチです」

「なるほど」

とにかく、ボーリングでいえば、ストライクが3回続くようなことなのだろう。

「2本目までトリプルに入ったとします」

「はあ」

「さあそのあとですよ。プレッシャーに弱いと、3本目ははずしてしまいますし、土壇場に強ければ3本連続トリプルに入ります」

「つまりトンパチですね」

「そうです」

「すると、メンタルな要素が強いということですね」

「そうともいえますね。ですから、ダーツの世界では、『3本目に放つダーツが本当の実力を示す』とも言えるわけです」

「なるほどねえ。まるで人生のようだ」

「どうです、面白いでしょう」

「たしかに」

「一度試しにやってみたらいかがですか?」

「はあ」

ここでまたもう1人の私がつぶやく。

(おい!ここで調子に乗って、ダーツなんか始めるんじゃねえぞ!)

(どうして?)もう1人の私に、私が反問する。

(だって、Sさんは、もともとスノボーとかバイクとかを趣味にしている人だぞ。そういう人だから、ダーツは面白いと思えるんだ)

(なるほど、そうか)

(スノボーとか、バイクとかにひとっつも関心のないお前に、ダーツが面白いと思うはずはないだろう!)

(なるほど、それもそうだ)

という脳内会話の結果、ダーツの趣味は、しばらく見送ることにした。

…そんなこんなで、昨日から今日にかけての約650キロの大移動も、無事終了した。

明日から週末にかけて、また別の仕事がはじまる。

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とんぱちれんぱつ
http://youtu.be/BMCn4iySdms

投稿: 三元豚こぶぎ | 2015年1月 8日 (木) 00時05分

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