心配はいらない
1月25日(日)
今日は一日、まるでブレーカーが落ちたようにまったく体が動かず、死んだように眠っていた。
妻に勧められて、フジテレビのドラマ「問題のあるレストラン」の第1回を見た。
見ているうちに、だんだん腹が立ってきた。
真木よう子ほか、俳優の演技じたいはすばらしい。とくに私は、ショートカットの真木よう子のファンなのだ。
そんなことはどうでもよい。
私がよく言う、山田太一脚本の「高原へいらっしゃい」、市川森一脚本の「淋しいのはお前だけじゃない」の系統に連なる、「さまざまな事情をかかえた人間が、一つの目的に向かって突き進むドラマ」であるとみた。
あるレストランを舞台にした話なのだが、男性上層部の女性社員に対するセクハラやパワハラの実態を、多少誇張しながらも、あますところなく描いている。
「女性が輝く職場」などとうたいながらも、実際は、男性が管理職をしめ、女性の人権をないがしろにするような態度を平気でとっている。そこに腹が立ったのである。
「あれはドラマの世界だよ、あんな大げさなことがあったら、いまの会社は社会的信用を失って潰れるよ」
と思うかもしれないが、それは問題の本質を見誤っている。
どんな些細なレベルでも、セクハラやパワハラを受けた側は、大きな心の傷を負うのである。
その根底には、いまだにはびこる男性優位の風潮がある。
「前の職場」でも、その傾向があった。
「男女共同参画の職場」とうたっておきながら、その実、社長をはじめとする執行部は、全員男性である。
もし「男女共同参画」をうたうのであれば、まず理事に女性を入れるべきである。そのうえで、実力を競わせればよいのだ。
だが、そんな発想を持つ上層部は、誰もいなかった。
高等教育機関ですらそのレベルだから、あとは推して知るべしである。
…と、そんなことを考えたのは、卒業生たちのことが頭に浮かんだからである。
ここから先は、全然別の話。
数年前、私が指導するある4年生から、相談を受けた。
AとBと二つの会社から内定をもらったのだが、どちらにしたらよいか。
Aは、自宅から少しだけ離れているが、比較的大きな会社。
Bは、自分の住む町にある、小さい会社。
自分の住む町に愛着があるので、Bの会社も捨てがたい、という。
私は、「Aの会社がいいと思う」と答えた。
自分の住む町のために働くのもよいが、それよりも比較的大きな会社で、多くの同僚たちに揉まれながら視野を広げていく方がいいと思う、と。
その学生はAの会社に就職した。
そして最近、その卒業生に、
「職場はどう?」
と聞くと、
「いまの部署で、はじめて壁にぶつかりました」
という。
「どうして?」
「面倒な上司にあたってしまって、そのとばっちりを受けてイヤな思いをして、そのせいで仕事のやる気も失っています」
まあ、職場ではよくあることである。
「これも序の口でしょうけど、大人の世界ってヤツですね。勉強だと思ってがんばります」と言ったあと、こう付け加えた。
「でも基本的には、人に恵まれていて、いい職場です」
私は、あのときAという会社を勧めてよかったのかどうか、たまに考えることがあったが、「いい職場です」と言ってくれたことに、少し安堵したのであった。
これから先も、職場や社会では、理不尽なことが起こるかもしれない。
理不尽なことには、抗ってほしい。
…いや、私がそんな心配をせずとも、私の卒業生は、自分の道を自分で切り開くことのできる人だから、もう心配はいらないのかもしれない。
同じ志を持つ職場の仲間たちが、きっと支えてくれるだろう。
遠くから見守ろう。
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