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なくなりそうでなくならないこうもり傘

以前、「傘運がない」という文章を書いた。

傘とは、たいていどこかに置き忘れてしまうか壊れてしまうかの、悲しい別れ方しかしない。だからいつも高価なこうもり傘は買わず、いつなくしてもいいような安物の傘ですませていた。

だが、これではいけないと思い、前の勤務地にいたとき、オシャレな雑貨屋さんで、これまたオシャレなこうもり傘を買った。

自分にとって、いままででいちばんお気に入りのこうもり傘である。

(こんどこそ、絶対なくすもんか!)

幸い、前の勤務地を離れた今でも、その傘は壊れることもなくすこともなく、健在である。

しかし、何度もなくなる危険に見舞われた。

一番多いのは、飲み屋に忘れてきてしまうことである。

とくに、職場の近くにある、「よく行く飲み屋」に忘れることが多い。

あとでハタと思いだし、翌日、その傘を取りに行くのである。

いつだったか、「今世紀最大の二日酔い」事件の時も、やはり職場の近くにある、行きつけではない店にこうもり傘を置いてきてしまった。置いてきたもなにも、このときは1次会の店を出た時点でまったく意識がなかったのだから仕方がない。

翌朝、二日酔いの朦朧とする意識の中で、傘を忘れてきたことを思い出し、職場に行く前にその店まで行って、傘を取り戻してきた。

朝早かったので、もちろんお店は閉まっていたが、幸いなことに、傘立てが店の外に置いてあったので、傘を取り戻すことができたのである。

店の外の傘立てに、寒そうに立てかけてあったこうもり傘。

(よかった…。お前ここにいたんだね…)

まるで、迷子になって外で震えていた飼い犬と再会した気持ちである。もっとも、犬を飼ったことがないので適切なたとえかはわからないが。

また、こんなこともあった。

職場からの帰り、駅のホームでベンチに座って待っていると、特急電車がホームに入ってきたので飛び乗った。

電車に乗ってから気がついた。

(いけね!こうもり傘をベンチに置いてきちゃった!)

私はベンチの椅子の背もたれに傘を立てかけたことを忘れてしまい、それを持たずに電車に乗ってしまったのである。

あなたならどうしますか?

以前の私だったら、もういいや、とあきらめていたのだが、なにしろお気に入りのこうもり傘なのだから、あきらめるわけにはいかない。

10分ほどして次の駅に電車が到着したので、急いで電車を降り、反対ホームの電車に飛び乗って、先ほどの駅に戻った。

(誰かが持って行っちゃったかな?それとも駅員さんが片づけちゃったかな?)

と不安だったが、ベンチに駆けつけると、椅子の背もたれのところに、ちょこんと、傘が立てかけられたままだった。

(よかった…。お前、まだいたんだね)

やはり迷子の飼い犬と再会した気分である。

さて、先日の月曜日(26日)。

午後から雨が降るという予報だったので、お気に入りのこうもり傘を職場に持っていった。

その日の夕方、10人ほどのお客さんをアテンドして、職場の近くのいつもの飲み屋さんに行った。このとき、雨は降っていなかった。

夜8時半過ぎ、懇親会が終わり、カバンを持ってお店を出たが、何かが足りない。

(傘だ!傘がない!)

慌ててお店にもどった。

おかみさんに、

「傘、見かけませんでした?」

と聞くと、

「さあ」

という。

「私、今日傘持ってきてましたよね」

とおかみさんに確認すると、

「ええ、たしかに傘を持ってお入りになりました」

とおかみさんが答えた。

お店中を探してみるが、傘が見当たらない。

「外の傘立てに立てませんでしたっけ?」

私は記憶が曖昧になった。

「いえ、今日は、傘立てを外に出してないです。『雨が降りそうだから、傘立てを外に出そうかな』と思っていた矢先に、みなさんがおいでになったので、傘立てを外に出すタイミングを逸してしまったのです」

すると、傘はどこに行ってしまったのか?

「誰かが間違って持って行ってしまったんでしょうかねえ」

みなさん相当飲んでいたようだから、誰かが間違って持っていったのかもしれない。

「先生、もし傘が見つかったらご連絡しますよ」とおかみさん。

「お願いします」と言って、とりあえずその日は家に帰った。

それにしても、傘をなくしてしまったのは惜しい。

やはり、こうもり傘とはこういう別れ方をする運命だったのだ。

翌日の火曜日。

職場の仕事部屋にいくと、なんとお気に入りのこうもり傘が置いてあった!

私はてっきり、飲み屋にこうもり傘を持っていったと錯覚していたが、実は職場にこうもり傘を置いたまま、飲み屋に行ったのだった。

(よかった…。おまえここにいたんだね)

またしても、迷子になった飼い犬に再会した気分。

もはやこれは、「なくなりそうでなくならないこうもり傘」である。

それにしても不思議である。

私は、こうもり傘を飲み屋に持っていったと思い込んでいたのだ。あの記憶は、何だったのだろう。

そしてさらに不思議なことは、飲み屋のおかみさんも、「先生はたしかにこうもり傘を持ってお店に入ってきました」と証言していたのだ。

これって、「空脳(そらのう)」でしょうか。

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コメント

こんにちは、

某深夜番組の「1009回記念 歴代番組コーナーベスト12くらい」へは既に投票済みの涼風こぶぎです。

傘忘れでお困り?

こういう時には特許電子図書館で人類の英知を確かめるのが一番。

肩傘
http://www2.ipdl.inpit.go.jp/begin/BE_DETAIL_MAIN.cgi?sType=0&sMenu=1&sBpos=1&sPos=1&sFile=TimeDir_10/mainstr1422495549975.mst&sTime=0

どうです?

わが身に装着しておけば置き忘れることはないし、半魚人みたいでかっこいいでしょう。

あら、お気に召しません?

本当は、忘れてもいいように傘に名前を書いておけばいいんですよね。

世知辛い世の中、人の善意を信じましょう。

オンリーワン傘
http://www.suzuki-umbrella.com/category/1991945.html

どうせやるなら、このくらいしっかり書かないと。

鬼嫁さまとおそろいで作れば夫婦円満にもつながりますし、仮に傘泥棒の手に渡っても、これなら恥ずかしすぎて使えません。

いかがでしたか?

それでは皆様ごきげんよう。

涼風こぶぎでした。

投稿: 涼風こぶぎ | 2015年1月29日 (木) 11時10分

涼風こぶぎです。

お陰様で、人類の英知を確かめたい方が大勢おられるのか、上のコメントのリンクがつながりにくくなっています。こちらを聞きながらしばらくお待ち下さいね。

http://youtu.be/Ipw_gEMXoUE


なお、お急ぎの方は「特許電子図書館」の検索メニューからどうぞ。

http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl

涼風こぶぎでした。


---------

ご隠居おお~

どうした、熊。

なんでも、傘忘れをしない方法を電子図書館で検索するってのが巷で大流行(おおはやり)してるって聞きましてね。長屋のパソコンで引いてみたんですが、これがもお繋がらねーの何のって。

それだから、江戸っ子は短気で困る。いやいや、そんなもの調べなくても、わしに聞きに来れば済むことじゃ。

さすがご隠居。物知りだねえ。

こう言うものは、人に先んじて調べておかなくてはならないもんじゃ。

傘の置き忘れを防ぐ輪
http://astamuse.com/ja/published/JP/No/2000079047

この発明では指にはめられる大きさの輪を使うんじゃが、既に特許を取られているから、そのまま真似したのでは了見がよくない。そこでじゃ、これを参考にして、数珠のような輪を普段は傘につけておいて、傘を置いたら手首に付け替える。一杯引っかけて帰る時に手首の数珠を見て傘を思い出せば、忘れることはない。

なるほど、世の中には賢い人がいるもんだ。それじゃ早速、長屋に帰って、かかあからお数珠を借りて来ます。

まあせいぜい信心するがよいな。

けどね、ご隠居。

なんじゃ。

手首に何で数珠を捲いているかを忘れたら、一体どうするんです?

投稿: 涼風こぶぎ | 2015年1月29日 (木) 13時51分

ご隠居、こういうのはどうです?

なんじゃ、熊。

飲み屋に入ったら、忘れないように折りたたんでカバンにしまえるっていうこうもり傘は。

投稿: onigawaragonzou | 2015年1月30日 (金) 00時48分

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