職人魂に火をつけろ!
1月21日(水)
職人さんと一緒に作ってきた作品のうちの何点かが完成したというので、職場に完成品を持ってきてくれた。
すばらしい出来である。
…いや、たぶんふつうの人が見たら、「何だこれ?」と思うかもしれないが、私からしたら、かなりレベルの高い仕上がりである。
私にとっては、鉄道模型などよりもはるかにこっちの方がグッとくるのだ。
「いやあ、すばらしい。よくここまでに仕上げましたね」と私。
「いえ、鬼瓦さんの指示通りに作ったらこうなったのです」と若き職人さん。
もちろん営業トークだろうが、その職人さんはよく、「鬼瓦さんは、方針がしっかりしていてブレないので、仕事がやりやすい」と言ってくれていた。
「そうでない人もいるんですか?」
「ええ、いますね。私どもとしては、依頼主に判断していただかないと何ともしようのないこともあるんです。鬼瓦さんは、いつもちゃんと言ってくださるので、とても助かります」
この1年間、職人さんたちと仕事をしてみて、学んだりわかったりしたことは多い。
依頼主の私が、どういう方針でそれを作ってもらいたいか、まずビジョンをはっきりさせる必要がある。
その上で、職人さんに、いろいろと具体的な注文をつける。
それは理不尽な注文ではなく、ちゃんと理にかなった注文でなければならない。
こっちがレベルの高い要求をすれば、職人さんはそれに応えようとしてくれる。
何でもそうだが、仕事というのは、「いま自分がやっていることに意味があるのだ」ということに気づいたときに、やりがいが生まれるのである。
職人はプロだから、理にかなっている要求には、ちゃんと応えてくれるのだ。
だから私の仕事で大事なことは、「職人さんをその気にさせること」「職人魂に火をつけること」「意味がある作業だということに気づかせること」なのである。
そのためには、私自身がその仕事に対して誠実でなければならない。
こっちが本気だということがわかれば、職人さんも手を抜くわけにはいかなくなる。
さて、できあがった作品、公開は数年後である。
しかも、とても地味な作品なので、気がつかずに通り過ぎてしまわれるかもしれない。
誰が作ったのか、といったことは、その作品を見てもわからない。
もちろん、私の名前が書いてあるわけでもない。
数十年もたてば、誰が作ったかなんて、わからなくなってしまうだろう。
でも私は信じているのだ。
この作品は目立たないけれど、これからも残り続けるだろう、と。
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