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甘い汁を吸う人たち

現職の農水大臣が、13億円の補助金が決定していたある砂糖業界の運営するビル管理会社から100万円の献金を受けていたことが指摘されたが、大臣は「違法性はない」としながらも、その受け取った100万円を返金した。

政治資金規正法は、国の補助金の交付が決定してから1年間の政治献金を禁じている。

当時、農水大臣は、政権与党のTPP(環太平洋経済連携協定)対策委員長で、砂糖はTPP交渉で関税撤廃の例外を求める重要5項目の一つだった。

農水大臣は、その砂糖業界と、その砂糖業界が運営するビル管理会社は「法人格は別」であるとして、違法性がないことを強調した。

このニュース、数年前までだったら、大臣の進退を揺るがす事件になったかもしれないが、いまはすっかり、そんなことがなくなってしまった。

ジャーナリストたちも、これ以上は追求しようとしておらず、大きなニュースにはなっていない。

だが気になるのは、農水大臣と砂糖業界とのつながりである。

砂糖業界と政権与党とのつながりは、近代以降、かなり根深いものがある。

それを執拗に追っていたのが、松本清張であった。

なぜ、砂糖業界と政権与党は癒着してきたのか。

松本清張『現代官僚論』には、次のようにある。

「砂糖会社は、従来、政党と密接な関係を持ち、これが歴代の内閣や政党人の大きな資金調達源になっていた。そのためによく汚職が起り、日糖事件は世に有名である。

それが、戦後は原糖の輸入枠を設けて業者に割当て制をとることになった。それは黒い原糖を白く精製するだけのいわゆる「クリーニング屋」と悪口を叩かれている「精糖」だ。安い原糖を買って、クリーニングすることで高く売る砂糖業者が文字通り甘い汁を吸ってきたことは、これまで政党の食いものになったことでも分かる。」

松本清張が、砂糖業界と政・官との癒着について描いた小説は、以下の3つである。

「ある小官僚の抹殺」1958年

『中央流砂』1966年

『溺れ谷』1974年

松本清張の小説を読めば誰でもわかるように、農水大臣と砂糖業界との癒着は今に始まったことではなく、近代以来の長い歴史がある。もちろん、昨今のジャーナリストたちは、そんなことは百も承知なのだろうが、それ以上深入りする気配もない。

松本清張が生きていたら、どんな分析をしてくれるだろう、と思う。

なお念のため断っておくと、『中央流砂』は、砂糖をめぐる汚職事件をとりあげてはいるが、官僚組織の実態や行動様式を描くことに主眼を置いている。国の役所や役人の身近で働いてきた私にとっては、実に人間観察の参考になる本である。

ちなみに『中央流砂』と『現代官僚論』を読み合わせていくと、小説『中央流砂』に登場する官僚が、実在の官僚をモデルにしていることが、よくわかる。『中央流砂』で鍵を握る登場人物である「岡村局長」は、河野一郎農林大臣の下で、彼を支えてきた安田善一郎という官僚を、明らかにモデルにしている。

心覚えのために、書き記しておく。

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