ソウルの焼き肉屋で待ち合わせ
2月28日(土)
2日ほど過ぎてしまったが、OQ忌にあわせて、思い出話をひとつ。
「前の前の職場」の同僚だったOQさんは、毎年おこなわれる学外実習で、10人ほどのゼミの学生を韓国に連れていっていた。私やこぶぎさんもその学外実習に何度かついていった。私が「前の職場」に移ったあとも誘っていただき、部外者であるにもかかわらず参加させてもらっていた。
いつの実習の時だったが、覚えていない。ひょっとしたら、2001年の夏、私がはじめて、OQさんの韓国実習についていったときのことだったかもしれない。
そのとき私は、ひどく体調が悪くて、少し風邪気味だったことだけは覚えている。
ソウルに着いたとき、OQさんが言った。
「これからみんなで行く焼き肉屋さんで、人と待ち合わせているんだけど、一緒に食事してもいいかな」
「かまいませんよ」と私。「どういうかたです?」
「Sさんという人なんだけど」
「Sさん!?」私は驚いた。「Sさんって、あのSさんですか?」
「うん」
Sさんといえば私でも知っている思想家である。当代きっての理論派で、アメリカの大学を拠点に活躍している。私も背伸びをして本を読んでみたことがあるが、あまりに難解すぎて、挫折してしまった。
「お知り合いなんですか?」
「うん。いま、たまたまソウルにいるというので連絡をとってみたら、一緒に夕食でもということになって、焼き肉屋に来てもらうことになったんだ」
いまとなっては、どうやってその焼き肉屋で待ち合わせの約束をしたのかはわからない。あらかじめその焼き肉屋で夕食をとることをOQさんが決めて、Sさんに事前に伝えていたのか…?いやいや、OQさんがそこまで周到に準備をするはずはないから、とりあえず焼き肉屋に入ってから連絡をとったのだろう。
学生たちと一緒に焼き肉屋さんに入る。しばらくしてから、Sさんが現れた。
Sさんは店に入ってくるなり、挨拶もそこそこにOQさんの前に座り、まるで時間が惜しいかのように話しはじめた。
OQさんとSさんは、終始、難解な話をしていたが、体調が悪い私は、ただただ横で二人の会話をボーッと聞いているしかなかった。
ふだん、私やこぶぎさんやkさんの前でバカ話ををしているOQさんとは、全然違う。
なにしろ、(私のイメージでは)あの難解で気むずかしそうなSさんが(実際にはそうではないのだろうが)、わざわざOQさんに会いに焼き肉屋に来るというのが、私にとってはすごいことだった。
(まさか、本で読んだことのあるSさんと、ソウルの焼き肉屋で会うとはねえ)
日本やアメリカでお目にかかる機会は、まずないだろう。
そして、そんな形でSさんと会うことのできるOQさんに対しては、
(この人、実はすごい人なのかもしれない)
と、そのとき思ったのだった。
そういえばもう1人、OQさんのおかげで会うことのできた人がいる。金大中政権のもとで、日韓文化交流を進めたC先生である。C先生は、韓国を代表する哲学者であり、その時点でかなりのご高齢だった。
2000年秋、OQさんが講演会の講師として、「前の前の職場」にお呼びしだのだが、そのとき、夕食をご一緒した。C先生はとても気さくな先生だった。
OQさんに出会わなければ、SさんやC先生とお目にかかる機会もなかった。 まったく気負うことなく、SさんやC先生と会って話をするOQさんを思い出すにつけ、
(やっぱり、この人はすごい人だったのかも知れない)
とあらためて思う。
久しぶりにSさんの難解な本に挑戦してみるかな。
| 固定リンク
「思い出」カテゴリの記事
- 憶えていない(2024.09.27)
- カレーの思い出・コバヤシ編(2024.09.21)
- カレーの思い出(2024.09.14)
- これぞゴールデンヒストリー(2024.04.06)
- 今年の新語流行語大賞(予想)(2023.09.16)
コメント
何しろ、ご先祖様が落語になってるぐらいですからねえ。
自腹を切ってもらったことは、たぶんないけど。
投稿: おからこぶぎ | 2015年2月28日 (土) 17時10分
たしかに、自腹を切ってもらった記憶はないねえ。
http://ginjo.fc2web.com/130soraidoufu/sorai_doufu.htm
投稿: onigawaragonzou | 2015年3月 1日 (日) 00時41分