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名言の行方

前回書いた、「禁煙はたやすいことだ。私はすでに何千回もやった」という名言、というか、ジョーク。

これを言ったのは、アメリカの作家・マーク・トゥエインなのか?それともイギリスの劇作家・バーナード・ショウなのか?

ひょんさんとこぶぎさんのコメントのレベルが高すぎる!

本文記事よりもコメントのほうがレベルがはるかに高い。

私はただ単に、「月曜から夜ふかし」を見ていて気になったことを書いただけなのだ!

とくにこぶぎさんは、「引用探偵」という、妙な英語版サイトを見つけてきてくれた!

ここに、ほとんど答えが書いてあるではないか。

Yahoo!知恵袋みたいに、質問者がいて、それに対して「引用探偵」なる者が回答する、という形式になっているのだが、質問の部分については、すでに前回のコメント欄でこぶぎさんが翻訳してくれている。

質問の趣旨はこうである。

自分は友人に、「喫煙をやめるのは簡単だ。私はそれを何百回もしてきた」というマーク・トゥエインのジョークを言ったところ、友人は、「それはコメディアンのW.C.フィールズが言ったジョークで、トゥエインのものではない、しかも、これはもともと飲酒についてのジョークで、喫煙ではない」と文句を言われた。はたして真相はどうなのか?と。

重要なのは、それに対する、「引用探偵」の調査結果である。

原稿を書かなければいけないのでそれどころではなかったのだが、現実逃避をして、英語で書かれたこの調査結果を、まとめてみることにした。

あくまでも概略であり、誤読しているところもあるかも知れない。

書かれている内容は、以下の通りである。

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作家のマーク・トゥエインは、禁煙について書いてはいるが、このジョークを言ったというたしかな証拠はない。

コメディアンのW. C.フィールズは、1938年に「禁酒講義」というラジオ番組で、「禁煙」ではなく、「禁酒」バージョンのギャグを言っている。だが、禁酒バージョンのギャグは、これよりも前にすでに広まっていた。

最も早い事例は、1907年に、ハリス・ディクソンによって書かれた“Duke of Devil-May-Care”というタイトルの小説である。その小説には「ポーカーをやめるなんて簡単なことさ。俺はゲームが終わるたびに、1000回以上もやめているぜ」みたいなセリフがあるという。

マーク・トウェインと禁煙ジョークの関連を調べてみると、1914年に、友人のエリザベス・ウォレスという人に、禁煙をしたいという手紙を書いたらしく、そのときの手紙が「マーク・トウェインと幸せの島」というタイトルの短い伝記に書かれているが、ここで書かれているユーモアは、例の「名言」とは異なるものである。

禁酒法がまだ行われている間の1929年に、ネブラスカのオマハ・ワールド・ヘラルドという人が書いている。「ハリーは酒をやめると言うが、笑わせるぜ。酒をやめられないことなんてないぜ。なぜなら俺自身、もう100回以上も禁酒しているからな。酒をやめられるかやめられないか、これでわかるだろう」

1932年に、鉄道が刊行している“Norfolk and Western Magazine”という雑誌には、禁煙についてのジョークがある

「車掌のキャンベルは、たばこをやめたと言った。スチュワートは言った。「たばこをやめるのは簡単だよ。私は少なくとも100回はやめているからね」」

1935年の“The American Legion Monthly”の中に、酒でトラブルを起こす製材所の従業員を、主任が解雇させようとしたという、やや長いジョークがある。

「何が問題なんです?私の仕事ぶりですか?」

「いや、仕事は問題ない」

「じゃあ何で私が解雇されなきゃならないんです?」

「仕事中に酒ばかり飲んでるじゃないか。そんなことでは、人も殺しかねないぞ」

「それならわかりました。なに、お酒をやめるなんて簡単なことです。実際私は、この10年で1000回以上もやめてきましたから」

1936年の“The Southwestern Sheep & Goat Raiser”という雑誌に、いま知られているジョークと非常に近いバージョンのジョークがある。

先日、友人の一人が私たちに、禁酒なんて簡単なことだと言った。「私はもう1000回もしているからね」

1938年、W. C.フィールドは、「禁酒講義」というラジオの中で、こんなジョークを言っている。

禁酒できないなんて言わないで。簡単なことさ。俺はもう1000回もしている。

1938年10月に発行された“Scribner's Magazine”では、「私、たばこやめます」という記事を発表した。

ある若者が、医者から禁煙するよう命じられたが、それができないと不平を言ったところ、年をとったテキサス州民がパイプを一服しながら答えた。「禁煙なんて世界で最も簡単なことさ。俺はもう1000回もしている」

マーク・トゥエインと禁煙ジョークとの関係が最も早く表れるのが、1938年12月の“Journal of the American Medical Association”.である。彼が1910年になくなってからだいぶ後のものだが、この中に「マーク・トウェインは、これまでしてきた中で禁煙が最も簡単なことだ、なぜなら1000回もしてきたからだと言った」とある。つまり、マーク・トゥエインと禁煙ジョークは、彼の死後になって結びつけられたのである。

1941年に、カリフォルニアの新聞のコラムニストに、酒飲みが理由で解雇された人のギャグがある。

「あなた、酒飲んでるでしょう。仕事中に飲酒すれば、人を傷つけたり殺したりしかねません」

「わかりました。ではお酒をやめます。お酒をやめるなんて簡単ですよ。実際私は、この2,3年で少なくとも1000回はやめましたから」

これは、先の1935年の製材所の従業員が解雇されたときの話とまったく同じである。

1945年のリーダース・ダイジェストで、マーク・トゥエインの名言として、「禁煙は、私がこれまでしてきた中で最も簡単なことだ。なぜなら1000回もしてきたからである」が掲載されている。

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…ということで、やはり私が予想したとおり、「禁煙ジョーク」は、もともとテンプレートとしてあったもので、最初は主に「禁酒」だったものが「禁煙」に変わり、さらにマーク・トゥエインの死後、彼が言った名言として広まっていったようである。

このジョークが20世紀前半に集中してあらわれるのは、ひょんさんがいうように、この時期におけるトポスの再評価ともかかわるのかも知れない。

しかしまだわからないことがある。

バーナード・ショウは、どこに行った?

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コメント

近代演劇の確立者・バーナード・ショー

http://blog.izumishobo.co.jp/sakai/2012/07/post_1439.html

ちなみに、上の本文記事の最後の一文は、映画「マイフェアレディー」へのオマージュになっています。

そうですよね、ヒギンズ教授?


投稿: スリッパこぶぎ | 2015年2月27日 (金) 23時07分

さすがこぶぎさん。

本文記事の最後の一文は、バーナード・ショウ原作「マイフェアレディ」の最後のセリフ、「私のスリッパはどこに行った?」へのパロディになっています。

…というか、実はそこまで考えていませんでした…。私が意図していないことまで意を汲んでくれるとは、もはや私以上にこのブログの精神を理解していらっしゃる!

投稿: onigawaragonzou | 2015年2月28日 (土) 00時15分

映画と同じで、「近代演劇の確立者・バーナード・ショー」の方も、最後の一文が大事ですよ。

投稿: 禁酒禁煙こぶぎ | 2015年2月28日 (土) 00時31分

うーむ。実生活では禁酒禁煙だったバーナード・ショウが禁煙ジョークを言うはずはない。

やっぱり、「いかにもバーナード・ショウが言いそうなジョーク」として、彼が言ったことになってしまったんだろうか。

私が中学生くらいの時に読んだ本の中に、バーナード・ショウのジョークとして紹介されていたから、少なくとも30年ほど前の日本では、これがバーナード・ショウのジョークとして流布していたと思われるのだが…。

投稿: onigawaragonzou | 2015年2月28日 (土) 00時51分

금연만큼 세상에서 제일 쉬운 일은 없다. 나는 벌써 수백번이나 담배를 끊어 보았다.
- 마크 트웨인

https://mirror.enha.kr/wiki/%EA%B8%88%EC%97%B0

戒烟比什么都容易,要知道,我已经戒过一千次了。
- 马克·吐温

http://zhidao.baidu.com/question/385133384.html

戒烟是世上最简单的事,我就戒过一千次”
- 萧伯纳

http://www.dszw.net/thread-5252-1-1.html

三日遅れのOQ忌にふさわしい、「クルワを出でよ」的な方向へ脱線してみますが、韓国、中国ともに、マーク・トウェイン作の名言になっているようですね。

で、中国語・日本語で検索すると、バーナード・ショー作という記事が散見できますが、英語や韓国語で調べるとまず見つからないので、なんとなくこの「名言」は2つのルートで東アジアに伝わってきた気もします。

いっそ、こっちのネタで原稿書いたらいかかです?

ちなみに、Youtubeの마이 페어 레이디(敢えてリンクしません)は、ヒロインのセリフがハングル字幕でも訛っているのが面白いでシュー。

投稿: 脱線こぶぎ | 2015年2月28日 (土) 02時12分

たしかに。このネタで新書を書いてみたいもんですな。世に流布する「名言」が、いかに不確実なものであるか、というテーマで。

投稿: onigawaragonzou | 2015年3月 1日 (日) 00時38分

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