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原点はニットウジ書店

2月21日(土)

休日は、本屋さんで本を見ているときが、いちばんの至福の時である。

前の職場にいたころは、休日になると、市内に数軒ある「古書のリサイクルショップ」をめぐることが、唯一の楽しみだった。

そのルーツをたどっていくと、小学生のころ、母の実家の近くにあったニットウジ書店という、町に一つしかない、小さな本屋さんにいきつく。

母の実家は、県境を流れる大きな川のほとりにある、陸の孤島のような町にあり、その川のほとりに、小さな小さな本屋さんがあった。

名前をニットウジ書店といった。

盆と正月に、母の実家に遊びに行くと、私は決まってニットウジ書店に行って、漫画本を買った。

もちろん、私が住んでいた東京郊外の方が、大きい書店はいくつもあったのだが、私はこのニットウジ書店が好きだったのである。

後年、私が「前の前の職場」で、何かの折に体育専門の同僚と話をしたときに、その同僚がその川をはさんだ隣県の村の出身であることがわかった。私よりも少し年齢が上の同僚である。

私の母の実家がその対岸の町であることを告げると、

「○○町かぁ。子どものころ、川を越えて、その町の本屋さんまで、よく行ったなぁ」

「ニットウジ書店ですか?」

「そう!ニットウジ書店!うちの村には、本屋さんがなかったからねえ。一番近い本屋さんがニットウジ書店だったんだよ」

あの小さな本屋さんは、じつはその町だけでなく、あの川の流域の町々の「本文化」を支えていたんだ、ということが、あらためて分かった。

数年前に、祖母の法事でこの町を訪れたときに久しぶりにこの店の前を通ったが、すでに店じまいをしていたようで、シャッターが閉まっていた。

私の実家は、新宿から八王子に向かう私鉄の沿線にあり、駅に隣接してK堂というチェーン店の書店があった。だから子どものころはもっぱら、K堂で本を買うことが多かった。

ところで最近、自分にとって「本を買いたい」と思わせる本屋と、「買う気が起こらない」本屋がある、ということに気づいた。

必ずしも、大きい本屋さんだからといって本を買いたいかというとそうではない。むしろ、チェーン店の大型書店にいると、本を買う気が起こらなくなる場合がある。

一方で、時間を忘れて居続けられる小さな本屋さん、というのもある。

これはどういうことなのだろう?

一つ思い出したことがある。

大学を卒業したばかりのころだから、もう20年以上も前のこと、高校時代の友人のKさんにばったり再会したことがあった。

Kさんはそのとき、本の卸会社みたいなところに勤めていた。高校時代から、本が好きな人だった。

仕事の都合上、いろいろな本屋をめぐっているというKさんから、都内の本屋さんの話をいろいろと聞いた。

そのとき、どういう本屋さんがいい本屋さんなの?と聞いてみた。

Kさんは、大きい本屋さんがいい本屋さんだとは限らない、本屋さんの中には、店長さんや店員さんのこだわりが感じられる本屋さんがあって、そういうお店がいいお店だと思う、と答えた。

そのときに具体的に名前があがったのは、やはり新宿から八王子に向かう私鉄の、ある駅の前にある、○○という書店であった。

漢字二文字の書店は、その当時私の聞いたことのない本屋さんだった(のちにその書店は、この地域にいくつかの店舗があることがわかったが)。

さほど大きくない本屋さんだが、仕入れる本のチョイスだとか、本の並べ方などに、店長や店員のこだわりが感じられるのだという。

その話を聞いて行ってみると、たしかにいつも通っている本屋さんとは、少しこだわり方が違っていた。

いまでもたまにその本屋さんに行くのだが、その本屋さんに行くと、つい、多めに本を買ってしまう。知的好奇心をそそられるのである。

本屋さんには、「買う気にさせる本屋」と「買う気を起こさせない本屋」がある、というのはそういうことなのかと、私はKさんの話を思い出しながら思ったのであった。

そして「買う気にさせる本屋」の原点が、ニットウジ書店だったのだ。

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コメント

投稿: ひょん | 2015年2月22日 (日) 12時10分

追記。
よく使う古書販売サイトからニュースレターが来ました。どこも雰囲気のある書店ですが、ニットウジ書店に近いところはありますか。
ちなみに上から四つ目のジュソーム書店はよく行きました。ここの主人は物腰の柔らかい、実にいいひとなんです。上に紹介した本にも載っています。かの都にお運びの際は、どうぞご贔屓に。
http://www.abebooks.fr/livres/jolies-librairies.shtml?cm_mmc=nl-_-nl-_-F150200-h00-joliesAQ-122311xx-_-01cta&abersp=1

投稿: ひょん | 2015年2月27日 (金) 23時12分

いやいやいや、ニットウジ書店はこんなにオシャレではないです。村の雑貨屋さんみたいな作りの狭い本屋さんで、品揃えもふつうでしたから。

というか、こんな写真を出されたら、日本の本屋さんは勝ち目がないなあ。漢字二文字の書店だって、いたってふつうの書店です。

…あれ?これってひょっとしてひょんさん自身が作ったホームページ???

投稿: onigawaragonzou | 2015年2月28日 (土) 00時26分

いやいやちゃいます(笑)。ここで買ったものを職場の予算で処理するとき、妙に言い訳したりします。
昔の雑貨屋さんみたいな狭い本屋!最高じゃないですか。上に紹介したサイトの1番上もそんな風で、かなり「こなれた感」があります。神保町にあってもおかしくないですね。
そういえば3年ぶりの飲み会も書店の地下でした。お互い喫茶店と書店には目がないですね。

投稿: ひょん | 2015年2月28日 (土) 11時41分

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