VIP来たる
2月25日(水)
午後、職場に、昨年10月にもいらした韓国のVIPのお一人が、随行員の方と一緒にいらっしゃった。
基本的には、韓国語がネイティブの同僚と、韓国留学経験の長い同僚の二人で対応すれば十分で、私の出る幕などないのだが、私も念のためお供することになった。
相変わらず、私はほとんど役に立っていない。
しかも、二人の同僚は、VIPとは専門分野が近いのだが、私は、まったく異なるのである。
難しい専門用語が飛び交う中で、必死に聞き取ろうと努力した。
何度でも書くが、語学が上達するための大前提は、母語のボキャブラリーをいかに多く身につけるかである。語学の力は、それまで得てきた知識に比例するのである。
ひとつの用事が終わり、次の用事まで時間があったので、少しの間、応接室で休んでいただくことにした。
「すみません」と同僚が私に言う。「別の用事を済ませなければなりませんので、少しの間、ここをよろしくお願いします」
「はあ」
そう言うと、韓国語の堪能な同僚二人は部屋を出てしまった。
さあ困った。応接室にいるのは、VIPと随行員の方と私の、3人である。私に、二人のお相手をしておいてくれというのである。
もちろん、日本語で会話することはできない。
いったいどうやって、この場をつなげばいいのだろう?
VIPが気を使って、いろいろと私にお話をしていただくのだが、私の知らない専門用語や固有名詞が多すぎて、私にはかなり難しい。
しかし、必死に聞き取りをして、私の頭の中にあるこれまでの知識を総動員しながら、専門用語や固有名詞を、頭の中で特定したり、推定したりしていく。
うなずいてばかりはいられない。話を聞いて、適当なところでコメントを言わなければならない。
そうでないと、話を理解しているというアピールができないのである。
話を聞きながら、(どんなコメントを返そうか…)とコメントを考えなければならない。
結局、話も何となくしか聞き取れず、気のきいたコメントも言えなかったが、それでもひと言二言、「おっしゃることは理解しましたよ」というアピールを込めたコメントを言った。
そうこうしているうちに20分くらいが経ち、ようやく同僚二人が戻ってきた。
「すみません。席を外してしまって…」と同僚二人がVIPに言うと、VIPは、
「いいんだ。おかげでその間、学術的な話ができた」
とおっしゃった。私は気のきいたコメントを言うことができず、自分のふがいなさに落ちこむばかりだったが、VIPは気を使っておっしゃってくれたのだろう。
夕方から、VIPと随行員のお二方を囲んで、総勢10名で歓迎会をおこなった。
VIPは先日と同じように、日本酒の地酒を水のように飲み干し、目の前にいるボンクラな私にまたいろいろとお話になった。私も分からないなりに、必死に聞き取ろうとし、リアクションをとった。
「今日のVIPは、ずいぶん心を開いてお話になっていましたね」
歓迎会が終わったあと、同僚が言った。私は何の役にも立っていないのに、歓迎会が終わって店を出たとたん、どっと疲れた。
たとえ不器用でコミュニケーションがうまくとれなかったとしても、何度かお会いする中で誠実に対応すれば、その気持ちは相手に通じるのではないか、と、韓国のVIPとお会いするたびに、そう思う。
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