家族の春休み
3月27日(金)
新幹線と在来線を乗り継いで、片道4時間の出張である。
北へ向かう新幹線には、これから観光に行くという家族連れの人が多い。
とくにいまは子どもたちの春休みの時期なので、なおさらそいう時期なのだろう。
朝9時。東京駅から新幹線に乗り込む。
私が窓側の席に座っていると、上野駅から、家族の一団が乗ってきた。
全部で7人。アラフォーの女性、そしてその女性の両親と思われる老夫婦、さらにはその女性の子どもたちと思われる4人。合計7人である。
子どもたちの父親は仕事で来れないので、母親と、その両親、つまりおじいちゃんおばあちゃんとで、旅行に行くことになったのだろうと、私は想像した。
イヤな予感がしたが、案の定、私の座席の付近に立ち止まった。
私の隣の席と通路をはさんだ2列、さらに私の後ろの席の4列に、その家族が席を陣取った。
それにしてもものすごい量の荷物である。
なんなんだ、この荷物の量は?
ほどなくして、その意味がわかった。
「はい、ではこれから朝ご飯のお弁当を配りまーす」
その女性が大声で言うと、袋からひとりひとりのお弁当を取り出して、子どもたち4人に配った。手作りのお弁当である。
微笑ましいといえば微笑ましいのだが、それにしても弁当が大きい。
ひととおり配ったあと、今度は、
「では次に、おにぎりを配りまーす」
といって、子どもたちにおにぎりを2つずつ配りはじめた。
さっきの大きなお弁当は、おかずだけ入っているお弁当のようだ。
おにぎりは、ひとつが、ソフトボールくらいの大きさの、大きなおにぎりである。
「次に飲み物を配りまーす」
紙パックの牛乳を、みんなに配った。
(おにぎりに牛乳って…)
「次にデザートを配りまーす」
今度は、スーパーで買ったと思われる、いちごのパックを子どもたちに渡した。
袋から、食べ物が次々と出てくる。朝からどんだけ食べるんだ!
それだけではない。
「お昼のお弁当は、棚の上に上げておきますね-」
なんと、お昼のお弁当も作ってきたのか!!!
どんだけ弁当を作ってきたんだ???
ここでようやく、荷物が多い理由がわかったのである。
さて、その女性の両親と思われる老夫婦。
この老夫婦は老夫婦で、自分たちの分の弁当を作ってきていた。
やはり、どんだけ食べるんだ?というくらいの数のおにぎりを作ってビニール袋に入れていた。
案の定、食べるおにぎりはそのうちの1,2個である。
(食べる分量を考えて作ってこいよ!)
いちばんびっくりしたのは、大きなビニール袋の中から、レタスまるごと1個をとりだしたことである。
おもむろにレタスの葉っぱをちぎって、その場でサラダを作り始めたのである!
さらに、ドレッシングをびんごと持ってきていて、作ったサラダにかけていた。
(ここはお前らの家か!)
あっという間に私の周囲は朝ご飯のにおいに包まれた。
こうなったらもう原稿を書くどころではない。私はパソコンをとじて、カバンにしまった。
大騒ぎのうちに「朝ご飯を配る行事」が終わり、今度はその家族たちが、一心不乱に朝ご飯を食べ始めた。
大食いの私が見ても、
(朝からこんなたくさんは食えないよ)
というくらいの量である。
「お母さん、梅干し持ってこなかったの?」とその女性が、母親に聞いた。
「あら、持ってこなかったわよ」
「この炊き込みご飯で作ったおにぎり、自分で作ったんだけど、味がないのよねえ」
「お醤油ならあるわよ」
お母さんはカバンの中から、こんどは醤油のビンをとりだした。
(だからここはお前らの家か!)
しばらくして今度は後ろに座っていた子どもたちが
「お腹一杯でもう食べられない」
と駄々をこねてきた。
それはそうだろう。大食いの私だって見てるだけでお腹一杯になる量なのだ。
「じゃあおにぎりは食べずにとっておきなさい」
と、母親らしきその女性は言った。
「お昼ご飯はどうするの?」
「新幹線が11時半に着くから、向こうに着いてから食べるわよ」
私は急に心配になった。
いま、朝の9時半である。
この時間に朝ご飯をモリモリ食べるのはいいのだが、そうこうしているうちにもうすぐにお昼である。
彼らはほどなくして、また同じ量の弁当を食べるのだろうか?
大量に余ったおにぎりとレタスは、どうするのだろう?
せっかく観光地に行くのに、地元の美味しい料理を食べる機会は、あるのだろうか?
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コメント
この家族をイメージすると、どうしても「はじめ人間ギャートルズ」の主人公一家が浮かんでしまう…
投稿: ひょん | 2015年3月28日 (土) 23時32分
まさにそう!ギャートルズの実写版、といった感じでした。
誰か私のブログを映像化してくれる人、いないでしょうかね。5分番組でいいのです。
投稿: onigawaragonzou | 2015年3月29日 (日) 17時44分