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アラフォー山本周五郎の苦悶

毎日の疲労の原因は、このブログにあるということがわかった。

これを書くだけで、毎日かなりの時間がとられる。おかげで本業の原稿が進まない。

なにも命を削ってまで、書くほどのことではない。

ずっと以前に書いてお蔵入りにしていたものを公開することで、お茶を濁すことにする。

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『山本周五郎戦中日記』は、さながら原稿執筆日記である。日記は簡潔だが、そのときの心情がじつに率直に吐露されている。

原稿が思うように書けないことへの苦悶が語られていて、大作家でもそんなことがあるのか、と、救われる気持ちになる。

たとえば、昭和18年12月8日の日記。

「大東亜戦三周年の日である。四日から「にが虫」にかかっているが筆が進まない。今日も終日紙を汚しただけで終った。(中略)「にが虫」はついに失敗した。是はいかんぞと思っていると「侍豆府」もだめになった、一つつまずくと続くものである。やはりよく検討してから取りかからないと悪い」

「筆が進まない」という表現が、日記には何度も出てくる。

日記の中で、たびたび、自分に言い聞かせているような文章を書いている。前回あげた文章も、そのたぐいであろう。

いちばん笑った、というか面白かったのは、昭和19年10月19日から21日にかけての日記である。

10月19日。

「己には仕事より他になにものも無し、

強くなろう、勉強をしよう。

己は独りだ、これを忘れず仕事をしてゆこう。

神よ、この寂しさと孤独に

どうか耐えてゆかれますように。

 今日までの己は自分を甘やかしすぎた。

 己は今こそ身一つだ。

 なんにもない。

 浦安の茫屋(ぼうおく)にいた時の己に帰るのだ

 なにも有(も)たぬがゆえに

 すべてを有(も)つのだ。

 仕事だ、仕事だ。」

明らかに、仕事に向かうように自分を奮い立たせる文章である。

翌10月20日の日記。

「仕事せず。(中略)明日から仕事をしよう」

昨日の決意はどこへ行ったのか、「俺、明日から本気出す」と言っているのである。

さらにその翌日、10月21日の日記。

「やはり元気が出ない。気力が虚脱したようで、なにをする気持ちにもならない」

あれだけ、「仕事だ、仕事だ」と、日記に自分を奮い立たせる文章を書いたにもかかわらず、結局、2日間、やる気が出なかったのだ。

あれだけ多くの傑作を生み出す山本周五郎ですら、そうである。

私のような凡人が、何を恐れることがあろうか。

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