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アトリエ村、からの沖縄料理

3月30日(月)

「言いにくいことなんですけど」

「何でしょう」

「3月末までに、もう一度アトリエ村にご足労願えないでしょうか」

「えええぇぇぇ!!!またですか?今月で3回目ですよ」

「すみません。最後の確認がまだ少し残っていたんです」

「わかりました。ただし今月末までということですと、あとは30日しか空いていません」

「それでけっこうです。お願いします」

ということで、朝6時すぎに家を出て、新幹線と在来線と車を乗り継いで、4時間近くかかってアトリエ村に到着した。

最後の確認作業を終え、アトリエ村での滞在時間は1時間半ほど。

建物を出ると、目の前は例の高校の野球部のグランドである。

高校球児たちが練習をしていた。

そうか、いまは春休みなんだな。すっかり忘れていた。

そういえば、新幹線の中も、子ども連れの乗客が多かった。

この時期を狙って、子ども連れで家族旅行をする人は多い。

他人様が休んでいるときに働くことを、節句働きというそうだ。

私もさしずめ、節句働きである。

それにしても、我ながらよく働くねえ。

原稿だって、ゴールは見えてきた。

「春休みだから、月曜日でも練習しているんですね」

車で送ってくれる業者の人に言った。

「ええ、そうですね。とくに春休みは、他県の高校の野球部との練習試合が多いんですよ」

「そうですか。どうやってここまで来るんです?」

「バスに乗ってこのグランドまで来るみたいです」

「でも、ここの高校の部員たちは違うんでしょう?」

「そうです。この山の下までバスで来て、そこから走ってこの山をかけ登ってくるんです」

彼らはあくまでも、この山を走ってかけ登らなければいけないみたいだ。

他県から来た高校の野球部員が山の上までバスで来ることを、彼らはどう思っているのだろう?

逆に、山の上までバスに乗ってきた他県の高校生部員たちは、走って駆け上がってくるこちらの野球部員のことを、どう思っているのだろう。

「私、この高校を絶対に応援しますよ」

車はアトリエ村を降りていった。

新幹線に乗り、東京に戻る。夕方、都内でひょんさんと久しぶりに会って、飲むことになっていた。

沖縄料理のお店である。

約束の時間より少し早く着いてしまったので、お店の近くをブラブラ散歩することにした。

この町を初めて歩いてみて知ったのだが、びっくりしたことに、「東京」と名のつくたいそうな名前の神社がこの町にあることを知った。

神社じたいはこぢんまりしているのだが、それにしてはずいぶんと大仰な名前である。

さらに境内に入ってびっくりした。

お詣りに来ている人たちが、全員若い女性である!

しかも、御守りを買うのに長蛇の列ではないか!

平日の夕方なのに、これほど多くの若い女性がお詣りに来ているのは、どういうわけだろう?何か御利益でもあるのか?

あとでひょんさんに聞いてみると、

「パワースポットだからだよ」という。

たしかに、たまたまいま読んでいる岡本亮輔『聖地巡礼』(中公新書)という本に、この神社が紹介されていた。

「平日でも多くの女性の姿が見られ、それに合わせて対応策がとられている。夏に境内で涼しく過ごせるように、神社では全国初のドライミストが設置されている。授与品も工夫され、思いを寄せる相手の心を開かせるという意味を込めた鍵をかたどったお守りや、カップル用に二つ一組になった紅白巾着のお守りなどが頒布されている」

さて、沖縄料理の店である。

狭い店だが、週初めの月曜日だったためか、客は我々しかおらず、

「今日は貸し切りですね」

と、その店のおかみさん。久しぶりにオリオンビール、泡盛を飲む。

ひょんさんと四方山話がはずんだ。

壁に「いちゃりば兄弟」という色紙が貼ってあった。

「ぴんから兄弟」みたいなグループだろうか?

「この、『いちゃりば兄弟』ってのは、何です?」

「一度会えば、誰でも兄弟のように親しくなる、という意味の沖縄の言葉です」

「なるほど。このお店は、もう何年続いているんです?」

「10年です。最初は、沖縄料理を教えるために、1年だけ東京にいようと思っていたら、お店を出すことになって、10年たっちゃった。70歳の時に上京したんですよ」

「え?すると、いまは…」

「80歳です」

とても80歳にみえない。

「とてもそうは見えません。お元気ですね」

「そんなことないです。私が元気なうちにまた来てください」

「またうかがいます」

結局最後まで貸し切り状態だった。

たぶんこれだけのヒントでは、何というお店かはわからないだろう。

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コメント

ぴ、ぴんから兄弟…(^^);;
昨日はおつかれでした。私はちと飲みすぎたようで、珍しく翌日に頭痛を持ち越しております。鬼瓦先生は普通にご出勤ですかね。
ちなみに吉祥寺にあった沖縄料理店は、「いちゃりばえん」といいました(店はもうないので「固有名詞ルール」適用外でしょうね)。一期一会といったような意味だと聞いた気がします。いちゃりばっていい響きですな。また行きましょう。

投稿: ひょん | 2015年3月31日 (火) 12時47分

都会は桜の季節らしいですが、こちらはまだ残雪。

そこで一句。

春なれや 名もなき山の 薄霞


たぶんこれだけのヒントでも、何というお店かはわかるだろう。

投稿: 野ざらしこぶぎ | 2015年3月31日 (火) 16時58分

こぶぎさん、大正解です!

投稿: onigawaragonzou | 2015年3月31日 (火) 23時50分

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