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登場人物の多い一日

3月14日(土)

前の勤務地で続けていたボランティア活動の、年に1度の定期会合である。毎年、3月11日の前後に行われる。

集会室のような部屋に、多くの人たちが集まった。

「あ、先生!」

最初に私に声をかけてくれたのは、人生の大先輩、傘寿を越えたIさんである

「昨年は忙しかったですけど、今年こそはまたこちらで調査したいものです」と私。

「その時は、ぜひ声をかけてください」

「はい、必ずご連絡します」私は約束した。

次に声をかけてくれたのは、「特急のすれ違う駅の町」につとめるSさんである。

一昨年から、「特急のすれ違う駅の町」で私がお手伝いしていた仕事が再開することになったのだが、Sさんは、その担当者であった。

まさかこんなところでお会いするとは、私はびっくりした。「特急のすれ違う駅の町」からここまでは、ゆうに3時間はかかるはずである。

全然別のところで一緒に仕事している人と、その仕事とは全然違うことで、また別の場所で会う。人間のつながりというのは、まことに面白い。

「ダブルKさん」(ダブル浅野的な意味で)と会う。まずは「前の前の職場」のKさん。

「こぶぎさんはお元気ですか?」と私。こぶぎさんの連絡先を知らないので、その消息はKさんに聞くしかない。彼のブログで消息を知ろうと思っても、いまアップされている記事はすべて1年前に書かれたものばかりで、消息を知るにはまったく役に立たないのだ。

「最近は、スキーにばかり行っているみたいですよ。冬は雪のために自転車が乗れないそうなので」

あの運動嫌いなこぶぎさんが、今はもうすっかり自転車とスキーにはまっているのだから人生というのは、本当にわからない。

次に世話人代表のKさん。

「職場が変わっても、お客さん、少ないでしょう」

私に会うなり言った言葉である。私は昔から、マイナスオーラを出す人間なので、イベントを企画しても人がほとんど集まらなかった。そのことを知っているKさんは、今の職場でもそうなのだろう、という意味で、そう言ったのである。

私に会うと、相変わらず口が悪いのだが、その口の悪さは、おそらく父親譲りなのだろう。長いつきあいなので、もうすっかり慣れてしまった。

「どうして、私たちにちゃんとお別れを言ってくれなかったんです?」

そういえば、昨年3月にこの地を去るとき、ボランティアの仲間たちにちゃんとお別れを言わないまま、引っ越してしまったのだった。引っ越しが忙しかったということもあるが、お別れの言葉を言ってしまうと、何となく関係が切れてしまうような感じがして、言い出せないままこの地を離れたのである。

「それは、その…、いつでもまた戻れるように、と思って…」私はKさんに言った。

続いて、卒業生の「ダブルT君」(ダブル浅野的ではない意味で)。

会合の総合司会を後輩のほうのT君が担当し、閉会の言葉を先輩のほうのT君が担当した。

彼らの成長ぶりに、驚いた。

とくに、T君の閉会の挨拶は練った内容で、喋りの技術が格段に進歩していた。場数を踏んだ成果だろう。最近は、ラジオにも出演して好評を博したらしい。

さらに二人にとって後輩にあたる、2年生のU君も、頼もしい。

そしてトリプルTさん(ダブル浅野的ではない意味で)。

残念ながらお話しする機会を逸してしまったが、この3人にお会いすると、本当に安心する。

大学院生のYさん。

この3月で大学院を修了し、4月からは、Yさんにとってはいままでまったく縁のなかった町に、就職することになった。

大学2年の時から4年間、ボランティア作業の中核として大活躍した。

それがきっかけで、研究テーマを見つけて大学院に進み、さらにこの4月からは自分の専門を生かせる職場に就職することができた。

私はボランティア活動でしかおつきあいがなかったが、まるで自分の卒業生のことのように嬉しい。

しかも、就職先は新天地だというのがいい。Yさんの大学の先輩であるK君もまた、数年前に新天地に就職したが、新天地に就職すると、人間はたくましくなるのだ。それは、K君が証明している。

仕事仲間のSさんとYさん。同志、といってもよい。

現場を何よりも大切にする姿勢を、私はこの二人から学んだ。だが二人がそれぞれ属する職場の上層部は、現場にまったく関心を持とうとしない。地道な現場が、次第に職場から排除されようとしている。

二人はこれからますます忙しい立場になるが、それでもなお、二人はぶれることなく、抗い続けるだろう。

そして最後に、同い年の盟友・Uさん。

Aさんが、2年間にわたる被災地支援の仕事から戻り、その入れ替わりで、4月からUさんが被災地支援の仕事で隣県に赴くことになった。単身赴任である。しかも仕事の現場は、私も関わりのある「特急がすれ違う駅の町」なのだ。

「朝、起きられるの?」私は心配した。奥さんがいなければ、Uさんは何もできないのではないかと思ったからである。

「大丈夫」と、Uさんは言った。

Uさんもまた、少しの間だけれど、この町を離れるのか。

先日Uさんは、いちどわが家に泊まりに来いよ、と言ってくれたが、実現するのは少し先のことになるなあ。

「特急のすれ違う駅の町」で、会うことにしようか。

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