寝落ちって何だ?
ひたすら忙しくて、特に話題もないので、たわいもない話をひとつ。
電車に乗っていたら、前に乗っていた女性二人が会話をしていた。
「ネコ派?イヌ派?」
「うーん。ネコ派かな」
いつも思うのだが、ネコ派とかイヌ派とか聞いて、どうするのだろう?
というか、ネコ派とかイヌ派に分ける意味って何なのだろう?
そもそも、「ネコ派」「イヌ派」というのは、「ネコ好き」「イヌ好き」という意味なのか、それとも、自分自身が「ネコ的」なのか「イヌ的」なのかという意味なのか、考え出すとよくわからない。
こういう「意図のわからない会話」というか、「言葉だけがむなしく空(くう)を飛び交う会話」、というのがたいそう苦手なので、私はたぶんふつうの飲み会というのが、苦手なのである。
そういえば先月だったか、出張中の列車の、隣のボックスシートで会話していた女子たちは、なかなかよかった。
おそらく大学生の女子3人の卒業旅行っぽかったのだが、一人が、
「私、『寝落ち』っていう言葉の意味がワカンナイ」
と言い出したのである。
(「寝落ち」か…たしかに聞いたことがあるなあ。そういえば学生がよく使っていたなあ)
と思いながら聞いていると、どうもその学生は、「寝落ち」という言葉の意味をインターネットでひととおり調べてみたんだけれど、本来の語感から考えるとどうも納得がいかない、という話を、延々としていて、その話を二人の女子が熱心に聞いていた。
座席で隔てられていたので、細かい内容の話は聞けなかったのだが、「寝落ち」という言葉に注目して、その使い方の「納得のいかなさ」を理屈を交えて延々と話している。
このテーマならば、「ネコ派かイヌ派か」の話よりも、かなり好感がもてる。
そうか、つまり私は理屈っぽい話が好きなんだな。
ところで「寝落ち」の意味については、相変わらずよくわからない。
「○○落ち」というのは、ふつう、落語でいうところの「オチ」の意味で使われる場合が多い。
「考えオチ」とか、「出オチ」とか。
その語感からすると、「寝落ち」というのは「夢オチ」と同じような使い方か?というと、そうではない。
あるいは、映画「蒲田行進曲」でいうところの「階段落ち」と同じような使い方か?というとそうでもない。
「都落ち」と同じような使い方でもない。
調べてみると、「何らかの活動をしている最中に、睡眠状態に陥ってしまうこと」をいうらしい。
たとえば本を読んでいて、いつの間にか寝てしまう、というようなことだろうか。
その場合、「寝落ち」の「落ち」とは、どういう意味なのだろう?
「本を読んだまま寝てしまって、がくっと首が落ちる」の「落ち」だろうか?
よくわからない。
別の説明では、こうある。
「オンラインゲームなどで、ゲームにログインしていても操作するプレイヤーが睡眠を取っていて画面の前にいないこと」「プレイヤーが寝ていてキャラクターが移動や戦闘、会話が一切出来ない状態になること」
この場合、途中で寝てしまったためにゲームやコミュニケーションに参加できなくなってしまったことを「寝落ち」というらしい。
つまりこの場合の「落ちる」とは、「脱落する」「落伍する」「ドロップアウトする」という意味か?
「寝落ち」の「落ち」とは、「原稿が落ちる(原稿が出せずに脱落する)」の「落ちる」と同じ意味なのである。
ということは…。
原稿が出せなかったことは、「原稿落ち」と言えばいいのか?
使い方としては、
「すみません。原稿落ちしました」
とか、
「あなた、また原稿落ちしたんですね」
とか。
…ま、その場合はふつうに、
「あなた、また原稿を落としたんですね。信頼していたのに」
と言えばいいのか。
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