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年に1度のゼロ次会

5月5日(火)

高校のOBによる吹奏楽団の、年に1度の定期演奏会が、私の実家の近くのホールで行われた。

楽団結成時は所属していたが、いまはもっぱら観客としてホールに足を運ぶ。

楽団の構成員は、私と同期のフクザワを最年長として、現役大学生に至るまで、実に世代の幅が広い。

(年々、知らない人が増えていくなあ)

開演前、少し早く会場に着いて、ホールに入りあぐねてうろうろしていたら、「先輩」と後ろから呼ぶ声がした。

振り返ると、5学年下のIさんである。

「後ろ姿で先輩だとわかりました」

最近よく言われるよ、と喉まで出かかった。

「ゼロ次会、行きますよね?年に1回のことですから」

ゼロ次会、というのは、演奏会の打ち上げの前に行われる飲み会のことである。

演奏会の打ち上げ、すなわち一次会は、演奏に参加した人たちを中心に、すべての世代のメンバーが参加する。この一次会は、ホールの片付けが一段落した午後7時過ぎから行われるのだが、5時に演奏会が終わってから一次会が行われる7時まで、若干時間があるので、「ゼロ次会」と称して気兼ねないメンバーで飲みに行くことが、いつしか恒例化したのである。練習に出なくなってからというもの、Iさんとは、本当に年に1度、ここで会うくらいでなのである。

「行きますよ」と答えた。

演奏会が終わり、ホールを出ると、同期のKさんがいた。

「今年は乗らなかったの?」と私。「乗る」というのは、演奏者として舞台に立つという意味である。

「曲が難しくって途中でついていけなくなっちゃって」

たしかに今年の演奏曲は、かなりハイレベルなものが多かった。昨年出演していたKさんは、今年は観客の側にまわったのである。

Kさんは、この4月から別の高校に異動したという。

「忙しい?」

「まだ異動して間もないからそれほどでも…。でも管弦楽部の顧問をやることになったから、そっちが大変ね」

数分ほど立ち話をした。

「ゼロ次会、行く?」

「ちょっと用事があって」

「じゃあまた来年」

「頑張ってくださいね」

「お互いにね」

年に1度、Kさんとは数分だけ会話を交わすだけだが、来年までまた頑張ろうと言って別れるのが、私にとっての風物詩である。それでなんとなく、今年も頑張ろうという気になる。来年も同じ会話が交わされる保証はないのだが。

舞台裏に行くと、今年もやはり、私の中学校時代の同級生の「ハマさん」が、ホール専属の舞台監督として仕切っていた。

「1年ぶりだね」とハマさん。

「最近はもっぱら客として見に来ているよ」と私。

会話はたったそれだけだが、年に1度、お互いが元気であることを確認する。

そう考えると、年に1度、この日にだけ会う人が、いかに多いことか。

ゼロ次会には、1学年下のモリカワさんも合流し、10名ほどで年に1度の話をした。

結局、なんだかんだで深夜零時近くまで飲んでしまったが、まあ年に1度のことだから、それもまたよいだろう。

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コメント

昨日はありがとうございました。
年に1回でも会えるのが嬉しいのです。

ただし、あの店のビールの銘柄はイケマセン…失礼いたしました!

投稿: 後輩のI | 2015年5月 6日 (水) 13時23分

あのビール工場の近くで育った者にとっては、たしかにいただけませんでしたね。

投稿: onigawaragonzou | 2015年5月 7日 (木) 01時59分

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