校長先生と生徒会長の会話
校長先生、この学校は体罰禁止のはずでしたよね。これからは教師の体罰を認めるんですか?
いえ、健全な人間育成をすることに変わりはありません。ただ、健全な人間育成を願ってばかりはダメです。私たちは果敢に行動しなければなりません。そこで「積極的健全育成主義」を掲げることにしたのです。
しかしこれでは、体罰を容認することと同じではないですか?
いえ、決して体罰を容認するものではありません。ただ、不測の事態を考えて、切れ目のない対策が必要なのです。
不測の事態に備えて、切れ目のない対策?
そうです。まずは、事態を「校内暴力予測事態」「校内暴力切迫事態」「校内暴力発生事態」に分類して、事態に応じて「体罰待機」「竹刀を持って準備」「体罰行使」といった対策を取るのです。
その事態は、誰が認定するのですか?
校長である私です。
どうもよくわかりません。他校の生徒にも体罰をするということですか?
いえ、そんなことはありません。ただし、他校での校内暴力がわが校の存立をおびやかすような事態になった場合、これを「存立危機事態」と位置づけて体罰行使を可能とします。ほかにも、わが校に重要な影響を与える事態を「重要影響事態」、地域の子どもたちの健全育成を脅かす事態を「健全育成共同対処事態」と位置づけています。
ますますわかりません。それは誰が認定するのですか?
校長である私です。
じゃあたとえば、不良生徒たちが、竹刀を持って廊下を歩いていたとします。これは、何事態ですか?校内暴力はまだ発生していないから、「校内暴力発生事態」ではありませんよね。するとこれは、「校内暴力予測事態」でしょうか?それとも「校内暴力切迫事態」でしょうか?
それは、そのときの事態を見て総合的に判断します。
むちゃくちゃ曖昧じゃないですか!やはりどう考えても、体罰を行使する機会が増えると思うのですが。
いえ、断じてそんなことはありません。ただし、わが校への攻撃意志が不明確な場合でも、集団的体罰権行使の対象になり得ます。
結局、どんな場合でも体罰ができるということじゃないですか!しかしそうなると、体罰が好きな人が校長になったときは恐ろしいことになりますね。「事態」が都合よく解釈されて、体罰を行使する方向に向かうと思うのですが。
体罰が好きな校長など、この世におりません。どうか安心してください。最高責任者の私が言うのですから、間違いはありません。
それがいちばんアブないんですが…。これらは、さまざまな「事態」にそなえて体罰を行使するか否かを定めたものということですね。
その通りです。
ではこの規則によって、本来の目的である「健全な人間育成」は本当に達成できるんでしょうか?
| 固定リンク
« 夢の国1周 | トップページ | ラジオに救われる »
「ニュース」カテゴリの記事
- 僕が寝てる間に(2024.12.04)
- オールドメディア(2024.11.19)
- なし崩し的に進む政治(2024.10.10)
- 文章を舐めるな(2024.07.10)
コメント