福岡はうどんだ!
5月28日(木)
深夜ラジオのカリスマDJが言っていた。
「福岡のうどんは、コシがないのがいい。いまは讃岐うどん系のコシの強いうどんがもてはやされているが、コシがない福岡のうどんも捨てがたい。日本中のうどんが讃岐うどんになってしまったら困る」
私も同感である。福岡にかぎらず、九州のうどんはコシがないのが特徴だと思うが、たまにむしょうに食べたくなるのである。
高校時代の友人、元福岡のコバヤシが何度も私に言っていたことだが、
「福岡といえばとんこつラーメン、というのは間違い。むしろ福岡で日常に食べられているのは、うどんとちゃんぽんだ」
という。
コバヤシから聞いたときは、「そんなもんかねえ」と聞き流していたが、今になって、コシのないうどんがむしょうに食べたくなってきた。
夕方、福岡での仕事が終わり、同僚たちとも別れて1人になった私は、空港でうどんを食べることにした。
いつもだったらとんこつラーメンなのだろうが、今日は絶対にうどんである。
空港には、とんこつラーメンやさんが2軒ほどあるのだが、いつもそこそこ混んでいる。
空港の中で、1軒だけうどん屋さんがあるのを見つけた。いままで気にもとめていなかったのは、とんこつラーメンにばかり目を奪われていたからであろう。
店に入ると、お客さんはほとんどいない。やはりとんこつラーメンのほうが人気なのだろうか。
カウンター席に座って、さあ何にしようかとメニューに手をかけようとすると、店員さんが近づいてきた。
「いまは、こちらの、『明太ネバネバ涼風麺』がオススメです。もしよろしかったらどうぞ」
「はぁ」
見ると、通常のメニューとは別に、「明太ネバネバ涼風麺」の大きな写真が載っているチラシがあった。
どうもこの時期限定のメニューらしい。
しかし今日にかぎっては、いわゆるふつうの、コシがなくて温かいうどんが食べたいのだ。
メニューを開いて、あれこれと考える。
(ごぼう天うどんがいいかな…。肉うどんも捨てがたいな…)
なんてことを考えていると、別の店員さんが水を持って私のところにやってきた。
「いまは、こちらの『明太ネバネバ涼風麺』がオススメです。ぜひどうぞ」
また「明太ネバネバ涼風麺」を勧めてきやがった。
「いかがですか?『明太ネバネバ涼風麺』」
どうしてこう「明太ネバネバ涼風麺」ばかり推してくるんだ?
(俺はふつうのうどんが食べたいんだよ!)
と心の中で叫びつつ、
「肉うどんください」
「承知しました」
店員さんは、
(なんだ、「明太ネバネバ涼風麺」じゃないのかよ、チッ!)
という顔をして、厨房のほうに戻り、
「肉うどん一丁」
と、やる気のない声で注文を伝えたのであった(もちろんこれは、私の被害妄想)。
しばらくして、「肉うどん」が運ばれてきた。
食べてみたら、期待通りである!
うどんにまったくコシがない!
これだよこれこれ!これが食べたかったのだ!
だしがきいた透明なおつゆも、最高である!
これからは、福岡はとんこつラーメンではなく、うどんだな。今度来たときは、ごぼう天うどんを食べよう。
心配なのは、とんこつラーメンにお客を取られて、あんまり客が入っていないことである。
あるいは、コシの強い讃岐うどん系のうどんに、人々が慣らされてしまったせいかもしれない。
空港にいる客は、福岡県外の人がほとんどだろうから、なおさら福岡のうどんにはなじみがないのであろう。
しかし福岡のうどんは、もっと自信を持つべきである!
「明太ネバネバ涼風麺」などと、奇をてらったメニューで人の気をひくよりも、持ち前のコシのなさとだしのうまさで勝負すべきである。
私はこれまでの自分が恥ずかしくなった。
これまで私は何度も福岡に出張してきたが、地元の方に、
「お昼はどうしますか?近くにとんこつラーメン屋さんとうどん屋さんがあるんですけど、どちらにしますか?」
と聞かれる場面がたびたびあった。そのたびに私は迷うことなく、
「とんこつラーメンにします」
と答えていたのだが、それが誤りだったことに、ようやく気づいたのである。
これからは迷うことなく、
「うどんです」
と答えることにしよう。
福岡は、うどんだ!
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