安全は、危険だ
飛行機に乗ると、前の座席のところにポケットがついていて、その中に、「安全のしおり」というのが入っている。
飛行機が危険な状態になったときに身を守るための、マニュアルを書いたものである。
以前、上岡龍太郎が言っていた。
「『安全のしおり』という言い方はおかしい。『危険のしおり』やろ!」
たしかに、危険な状態になったときのマニュアルなのだから、「危険のしおり」といったほうが正確である。
上岡龍太郎は、これに関連して、もっと過激なことを言っていた。ある飛行機事故に関してである。
「飛行機が方向を見失い、深刻な状況に陥ったときも、『機内は激しく揺れておりますが、飛行に支障はございません』というアナウンスが流れていたんだろうなあ」
「安全」という言葉は、それだけで安全を保証するものではない。
むしろそれを強調すればするほど、そこには「危険」が隠されているとみるべきである。
韓国に留学していたとき、ニュースで、
「安全事故」
という言葉を何度も聞いた。
「安全」と「事故」という正反対の意味の言葉を結びつけているこの言葉は、日本語にはない言葉で、なんとも妙な語感なのだが、「安全対策を怠ったために起こった事故」という意味らしい。
それならば、「不注意事故」とかなんとか言えばいいと思うのだが、韓国ではこの言葉が人口に膾炙しているのである。
「安全のしおり」といい「安全事故」といい、どうも「安全」という言葉は、胡散臭い。
安全だの平和だのと、プラスのイメージを強調しようとする力がはたらいているときは、正反対の状況への想像力を失わせようとする意図があることに、われわれは気づくべきである。
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コメント
「専守防衛」を言い換えると、「戦争に消極的であること」。その逆は、「平和に積極的であること」。ということは…??
投稿: ひょん | 2015年5月22日 (金) 21時42分
「大丈夫です、安心してください」と言われると、たいてい不安に感じるものですよね。…私だけか?
投稿: onigawaragonzou | 2015年5月23日 (土) 23時51分