豆腐が食べたくなる落語
5月19日(火)
今日は年に1度の健康診断だったが、今年はとりたてて事件が起こったわけではなかったので、省略する。
飛行機の座席で、映画を見たり音楽を聴いたりできるでしょう?
ふだん私は、ほとんどそれを利用しない。私は飛行機に乗ると、映画を見るわけでもなく、音楽を聴くわけでもなく、本を読むわけでもなく、ひたすらぼんやりと過ごすのがふつうである。
だが先日の韓国出張では、気が向いたのか、行き帰りの飛行機の中で、音楽を聴くことにした。
いろいろなジャンルの音楽がある中で、落語とか演芸の番組というのがある。
座席のポケットに入っている番組プログラムを見ると、三遊亭竜楽師匠の「徂徠豆腐」という演目が目についたので、聴くことにした。
私の元同僚のご先祖様が落語の題材になっているというこの噺。
お恥ずかしいことに、今までこの演目を聴いたことはなかった。
いちど実際に聴いてみたいと思っていたので、まさに渡りに船である。
竜楽師匠の落語というのも、初めてである。
江戸時代を代表する思想家、荻生徂徠が、まだ世に出ず、食えなかった頃の話。
徂徠の住む長屋の前をたまたま通りかかった、豆腐屋の七兵衛。
お金のない徂徠は、七兵衛から豆腐一丁を求め、それを一日の食事としていた。
しかも、その豆腐屋に払うお金すらないほど、困窮していた。
学問で身を立てるために、食べるものを惜しんで、本を読むことに費やす。
その姿勢にほだされた豆腐屋の七兵衛は、毎日豆腐とおからを徂徠に持っていくことで、彼を援助するのである。
稀代の思想家・荻生徂徠と、豆腐一筋のひたむきな七兵衛との不思議な友情の物語は、もとは浪曲として語られたそうだが、落語の人情噺としてもじつにふさわしく、すがすがしい。
竜楽師匠が演じる徂徠は、実に美味しそうに豆腐を食べる。もちろん、映像がないので音で想像するしかないのだが、音だけでも、その美味しさは十分に伝わるのである。おそらく、徂徠が空腹を満たすために豆腐を食べている情景が、思い浮かぶからであろう。
徂徠は言う。
「この世に豆腐くらいうまいものはない。だいいち、値が安い。それに、皮をむく世話もなければ、骨もない」
なるほど、さすが徂徠先生だ。けだし名言である。これほど豆腐のことを的確に褒めた言葉をほかに知らない。これを聴くと、豆腐、しかも冷や奴を食べたくなるから不思議である。
韓国から帰って以来、やたらと冷や奴を食べるようになったのは、そのせいである。
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コメント
わたくし、スー・こぶぎからの相談です。
昨日は年に一度の健康診断の日だったんですけど、健康診断の視力検査って、少し前から機械化されまして、
スコープの中を覗かされて、ジョイスティックで操作するようになったじゃないですか。
わたくし、これをゲーム感覚というか「おみくじ感覚」でやっていまして、今年の視力は上がった下がったと、毎年一喜一憂しています。
昨年度の視力検査では、「Cの字」が小さすぎて見えなくても、勘で上下左右を決め打ちしていたら大幅な視力減となり、保健室に呼ばれる始末。
そこで今年は、見えない「Cの字」は正直に「分からないボタン」を押して、直感で決める部分を少なくしたら、なんと大幅アップとなりました。
機械相手でも、正直さって伝わるのでしょうか。
以上、スー・こぶぎからの相談でした。
投稿: スー・こぶぎ | 2015年5月21日 (木) 10時18分
うちの職場の健康診断はまだ、「右」とか「上」とか、口頭で言うシステムですが、やはり最後のほうは勘で「上」とか「右」とか言ってしまいますね。
機械相手でも人間相手でも、正直さがいちばんですよ。
私は聴力検査の時、「音が鳴っているあいだ、ボタンを長押ししてください」といわれていたのですが、ヘッドホンから聞こえてくる音が、
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。
という断続的な音だったので、その音に合わせてボタンを何度も押していたら、
「音に合わせてボタンを押すのではありませんよ。成っているあいだは長押ししてかまいません」
といわれました。
バカ正直というのも、困りものかも知れませんね。
投稿: onigawaragonzou | 2015年5月22日 (金) 01時14分