金田明夫のお得感
久しぶりにテレビドラマの話でもしようか。
4月に入ったばかりのことだったか。
「ドラマ見ていたらさあ、ちょっと気になる女優がいて」と妻。「韓国の女優、キム・ヘスに雰囲気が似ているなあ。この人誰だろう?と思っていたら、誰だったと思う?」
「さあ」と私。キム・ヘスは、韓国を代表する女優である。「誰?」
「大島優子」
ひごろ俳優には手厳しい妻が、めずらしく大島優子を褒めていた。
私としては、よくぞ言ってくれた!といった感じである。私はまったくAKBのファンでもないし、大島優子のファンでもないのだが、たまにテレビのCMや駅のポスターなんかで見るたびに、
(この人、プロ意識が高いよなあ)
と思っていたのである。
大島優子はものすごい美人というわけではなく、たぶん学校で同じクラスだったとしても、そんなに目立つようなタイプの人ではないのだと思う。
だが、そこからの「伸びしろ」がすごいなあ、と、なんとなく思っていた。
…ということで、今期の一押しドラマは、TBSの「ヤメゴク」である!
このドラマ、大島優子とペアを組む、北村一輝がとにかくいい。北村一輝のおかげで、安心して見ていられるのだ。
テレビ朝日のドラマ「天国と地獄」の剛力彩芽と渡部篤郎もそうだが、「若手のアイドル的女優」と「中堅の男性俳優」でコンビを組ませれば、ドラマは安定するようだ。
そのルーツをたどると、「トリック」の仲間由紀恵と阿部寛に行き着くのかも知れない。
まあそれはともかく。
第6話では、町の巡査の役として、金田明夫がゲスト出演していた。
テレビドラマの「脇役マニア」の私としては、金田明夫の存在を語らないわけにはいかない。
私が最初に金田明夫を認識したのは、崔洋一監督の映画「月はどっちに出ている」(1993年)だったか。
そのあと、三谷幸喜脚本のドラマ「王様のレストラン」(1995年)で、「失礼な客」として、チョイ役で出ていた。このときの演技が実に印象的だったのである。
といっても、私は意識的に金田明夫の出ている作品を追っかけていたわけではないので、たまに見るドラマで出ていたりすると、なんとなく得した気分になるのだった。そう、「得した気分」というのが、ピッタリした表現である。
第6話で金田明夫が演じているのは、昔かたぎの人情派のおまわりさんである。
大島優子演じる主人公の麦秋(ばくしゅう)の住んでいた町のおまわりさんだったので、麦秋の幼い頃のことをよく知っていた。
ふとしたことで麦秋と再会した巡査・岩井田(金田明夫)は、麦秋が壮絶な人生を歩みつつ、警察官になったことを知るようになる。
だが麦秋は、決して自分の壮絶な過去を人に語ろうとはしない。
幼い頃の麦秋をよく知る岩井田は、何とかして麦秋の心を開かせ、背負っている重荷をおろしてやりたいと思うのである。
そのときのセリフがいい。
「いろいろと、話したくないことがあったんだね」
「岩井田さんには関係のないことです」
「でも俺は、勝手に心配する。勝手に心配になる。すまんね。これは、町のおまわりさんの性分でね。
町のおまわりさんというのはね、自分が担当している町の人全員、家族のように思っちゃうんだな。
俺は、麦秋ちゃんの町をずっと見守ってきたから、どうしても気になってね」
文字にすると伝わりにくいが、これが金田明夫が語ると、じつに説得力のあるセリフとなる。
何ということのない場面だったのだが、ウルッと来てしまった。
以前、田舎教師をしていたときのことを、ちょっと思い出したからかも知れない。いろんなことを勝手に心配したりしていたからなあ。
まあそれはともかく。
大島優子は、はたして日本のキム・ヘスになれるだろうか?
「ヤメゴク」は、飽きずに最後まで見ることができそうだ。
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投稿: 注釈こぶぎ | 2015年5月24日 (日) 20時54分