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あまさん

6月13日(土)~14日(日)

海の町に出張し、海女さんを取材した。

海女さんが経営する民宿に泊まり、翌朝、海女さんに案内されて、漁場に行く。

民宿の海女さんは、おばあさん、といっていい年齢の方である。軽トラックに男の子の孫二人を乗せて、私たちの車を先導し、漁場に向かった。

民宿の海女さんは、今日は漁に出なかったのだが、知り合いの海女さんが漁に出るということで、連れていってくれたのである。

その日、海女さんが漁に出るかどうかは、その日になってみないとわからない。今日は天気も悪くなく、海も穏やかなので、何人かの海女さんが漁に出たのである。

Photo漁場に着くと、すでに何人かの海女さんは漁をはじめていた。

その景色を遠くに眺めながら、民宿の海女さんの説明が始まった。

「私ら、小さい頃から海に潜ってますねん。そやから自然とこの仕事をするようになりましてん」

おばあちゃんに連れられて散歩しているこの二人の孫も、いずれは海の仕事に就くのだろうか、と私は想像した。

民宿の海女さんの話は聞いていてとても面白かった。

「1月と2月は、漁はお休みです。旅行へ行くんやけども、どこへ行くにも、あんまり美味しいものには興味あらしまへん。いつも美味しいお魚を食べとるからね。そやから私らにとっては、温泉が一番の楽しみなんです」

遊歩道のような道を歩いて、見晴らしのいい丘の上に着いた。

Photo_2すると、小さな石仏がいくつも、海のほうに向かって立っている。

「これは、お墓ですか?」

「そうです。遭難した海女のお墓です。お墓といっても、本当のお墓は別のところにあります。でもこうして海が見える場所にもうひとつお墓を作ってあげれば、仲間たちもいつでも海を見ることができるでしょう」

「たしかに、どのお墓も海のほうを向いていますね」

「私らにとっても、こうすることで、死んだ仲間のことを忘れないのです」

「なるほど」

「私らには、決まりがあります」

「どんな決まりですか?」

「毎月の7日と17日は、どんなにいい天気で、波が穏やかでも、漁に出ない、という決まりです」

「それはどうしてです?」

「7日と17日は、遭難した仲間を供養するために、漁に出ないのです」

「どうして7日と17日なんです?」

「海女が遭難するのは、なぜか7日と17日が多いんです。それで私らも、この日は海に出ずに、仲間の供養をすることにしとるんです」

7日と17日に遭難することが多い、というのは、本当だろうか?と、聞いていた誰もが訝しんだ。およそ科学的とはいえない話である。

しかし、7日と17日というふうに日にちを決めることで、月のうちこの2日は、死んだ仲間のことを思い出すのである。たとえそれが科学的とはいえなくとも、結果的には事故に遭わないように心がけるための合理的な方法であることには違いない。

「ちょっと、ごめんなさい!」

話の途中で、突然海女さんが大声を出した。

「孫が、うんちしたい言うてるんです!ちょっと孫をトイレまで連れていきます。話が途中でごめんなさい!」

そう言うと、孫を連れて一目散に見晴らしのいい丘を駆け下り、トイレへと走った。

孫は、間に合っただろうか?

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コメント

長旅の真っただ中だが、食事運が全くない。

くだんのジャズ喫茶は今回もシャッターを閉めて、開店する気配すらない。

学生から教えてもらった、じゃじゃ麺屋も臨時休業。

訪問先で教えてもらったそば屋は、大入満員で駐車場に入れない。

こうなれば、もはや吹きだまり的「聖地」と言っても過言ではない、いつもの道の駅の向いにある、水戸黄門みたいなハンバーグ屋に行くしかない。

入り口を入るなり、10人近くの先客が待っていた。

結局、ガソリンスタンドの中にある喫茶店で「ほぼにち」とコラボしたコーヒー豆を買い、道の駅の売店で「大橋がんづき」と「げんべた」を買って食にありつけた。

しかし、大橋がんづきのやわらかいこと。しかも味噌味だ。

がんづきは大橋に限る。

否、今日のメインディッシュはがんづきではない。

もうひとつの道の駅へ聖地巡礼して、かぼちゃ饅頭を食べるのだ。

復興工事の大型トラックで混雑する海沿いの国道を小一時間走って、その聖地に着いた。

しかし小さな店内を見回っても、肝心の饅頭が見当たらない。

明智探偵の推理によれば、この道の駅で間違いないのに。

レジのおばちゃんに恐る恐る聞いてみた。

「かぼちゃ饅頭は土日のみの販売となります」

投稿: 食難こぶぎ | 2015年6月16日 (火) 22時26分

内陸から海岸部まで、ずいぶん長い旅ですなあ。

くだんのジャズ喫茶は、タモリの大学時代の先輩が経営している、あの伝説のジャズ喫茶のことですか?ナベサダさんも、ここでのライブをCDにしてました。一度行ってみたいなあ。

投稿: onigawaragonzou | 2015年6月17日 (水) 00時14分

昨年、店に入ろうとして追い出された時に、ナベサダのチラシが張ってあるのを見ましたので、そこかと。

さて、今宵はどんどはれな宿に投宿中。

これまで記録的集中豪雨の町をうまいこと迂回してたわけですが、明日からはその地域へ突入します。

投稿: こぶぎわらし | 2015年6月17日 (水) 20時49分

「ヨルタモリ」でタモリが「岩手でジャズ喫茶を経営する吉原さん」という設定で出演していますが、この「吉原さん」は、くだんのジャズ喫茶の店主をモデルにしている、というのは常識?

投稿: onigawaragonzou | 2015年6月20日 (土) 23時44分

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