取り残された感じ
アナログな友人が、いつの間にかLINEをはじめていると聞いた。
ちょっと取り残された感じがする。
少し昔の例でいえば、
「スマホなんて持っていてもしょうがないから、俺たちはガラケーを持ち続けようぜ」
と言っていたのに、いつの間にかその友人の携帯電話がスマホに変わっていて、「取り残された感」を味わうような感じ、とでも言おうか。
人は無意識に、何の根拠もないのに、自分の基準となる人を設定するものである。
「あいつが結婚しないうちは、俺も結婚しなくても大丈夫だな」
などと安心していると、急にその友人が結婚してトントン拍子で家庭を築くようになる。
そうなると自分は、取り残された感じになる。
いまの私には、LINEがそれにあたるのだ。
それだけではない。
先日、夜中に高校時代の友人から携帯メールが来た。
件名が「大ニュース」となっている。
何だ何だ?何事だ?と思って見ると、
「○○から連絡が来た!お前のアドレスを○○に教えてもいい?そもそもこのアドレス生きてるのか?」
と書いてある。
○○、というのは高校時代の友人で、大学を卒業して社会に出てから、音信不通というか、行方不明になっていた。風の噂では、かなり波瀾万丈な人生を送っているらしかったが、現在の彼を知る者は、誰もいなかった。
その○○から、その友人のもとに連絡が来たというのである。
私はビックリして、すぐに返事を書いた。
「アドレス生きてるよ。連絡先教えてもかまわないよ」
この場合の「連作先」とは、携帯電話のメールアドレスのことである。
するとすぐに、その友人から、
「サンキュ!」
とだけ返事が来た。
よくよく考えると、なぜ何十年ぶりに、その友人のもとに○○から連絡が来たんだろう?わからないので聞いてみることにした。
「そもそもなんで連絡が来たの?」
すると友人からまたすぐ返事が来た。
「FBにいきなり」
FB、つまりFacebookのことか。今どき、私の年代でもたいていの人はFacebookをやっているだろうから、それじたいは驚くべきことではない。
それよりも驚いたのは、「サンキュ」とか「FBにいきなり」とか、友人の返信は実に短い。これも最近流行の文体なのだろうか。
私はまた返事を書いた。
「なるほど、FBをやっているとそんなこともあるのか」
すると友人からすぐに返信が来た。
「良くも悪くもね。なりすましだったりして…(>_<)」
相変わらず短い。それに顔文字も入っている。やはり最近のメールは、短く書くのが吉なのか???
私はまた返事を書いた。
「なりすますメリットがよくわからない(笑)。LINEくらいは始めようかと思う今日この頃だが、そもそもまだガラケーなのでいかんともしがたい(笑)」
私は古い人間なので、顔文字ではなく、つい「(笑)」を使ってしまう。
すると、しばらくして返事が来た。
「(^▽^)」
何だ何だ?ついに顔文字だけになってしまったぞ!
これはもう、このあたりで終わりにしようや、という合図だろうと理解し、これ以上返信を書くのはやめた。
そこでハタと考える。
友人のメールの返信は、なぜこんなに短いのか?
それは、彼自身がLINEをしているから、短い返信を書くことに抵抗がなくなったのではないだろうか?
そう思ったら、今どき携帯メールでこんなやりとりをしていることじたい、彼にとってはまどろっこしくて仕方なかったのではないだろうか?
またしても、「取り残された感」である。
さて、せっかく連絡先を教えたのにもかかわらず、長年行方不明だった○○からは、まだ連絡が来ない。
きっと携帯メールのアドレスを教えられて、
「今どき連絡先が携帯メールのアドレスかよ。ふつうはFBかLINEのアカウントだよな。連絡するのめんどくせえ」
と思っているに違いない。
さあどうする?俺。
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