リアル・あんちゃん
7月14日(火)のTBSラジオ「荻上チキ Session22」にゲスト出演した、『寺院消滅』という本の著者、鵜飼秀徳さんの話から(ポッドキャストより)。
長崎県の五島列島に、宇久島という島がある。
同じ五島列島でも、教会が多いことで有名な福江島とは違って、宇久島には教会がない。つまり、これといった観光資源となるようなものがないのである。
この小さな島には、無住のお寺があった。住職がいないお寺である。
かつては住職がいたのだが、あるとき、島の不便な生活に耐えられず、
「こんな島、誰も住まないぜ!」
と捨て台詞を残して、島から逃げてしまった。
島の檀家さんたちは、このことを心底悔しく思い、なんとか新しい住職さんを迎えようと、みんなでお金を出しあって、お寺の庫裏(住職の住むところ)を建て直した。いつ来るともわからない、新しい住職のために、である。
さて、ここから住職さん探しがはじまる。
やがて一人の若者に白羽の矢が立つ。
福岡・博多の「ハードロック・カフェ」の店員をしていた若者である。
たまたまこの店に来ていた常連客の僧侶が、この店員に目をつけ、彼を住職にスカウトしたのである。
仏教とは縁もゆかりもない、ハードロック・カフェの店員。
ねばり強い説得にすっかり根負けした彼は、「ハードロック・カフェ」で貯めたなけなしの貯金を全部修行のために費やし、僧侶としての修行を終え、これまた縁もゆかりもない小さな島に渡るのである。
そして、小さな島のさまざまな人間関係にとまどいながら、いまでは、その島になくてはならない住職となったのであった。
…なんとも不思議な話なのだが、本当にあった話。
これって、ずっと以前に日本テレビの「土曜グランド劇場」で放送されていた連続ドラマ「あんちゃん」(1982年)を彷彿とさせる。
このドラマは、「女子プロレスのマネージャー兼トレーナーの田野中一徹(水谷豊)が、父の急死をきっかけに郷里である宇佐木町に戻り、家業の住職を継ぎ一人前の住職として成長してゆく姿を描く」というストーリーである。前に書いたように、私はこのドラマが好きだった。
だがこの話は、「あんちゃん」よりもさらに奇抜な設定である。
「事実は小説よりも奇なり」とは、こういうことをいうのだろう。
この実話、ドラマにしたらおもしろいだろうな。
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