マネージャーのキクチさん
少し前、「怒り新党」というテレビ番組で、お笑い芸人の有吉弘行が言っていたことなのだが。
有吉が所属している芸能事務所「太田プロ」に、キクチさん、というおじいちゃんがいて、むかしビートたけしが太田プロに所属していた当時のマネージャーだった人なのだが、この人は、ふだん事務所で居眠りばかりしていて、たまに電話をとるくらいが、仕事である。
「ビートたけしのオールナイトニッポン」を聴いていた私たちの世代であれば、「マネージャーのキクチさん」が伝説的なマネージャーであることは、よく知っているだろう。
いまは好々爺といった感じで、とりたてて仕事もなく、太田プロにずーっといるそうなのだが、では必要のない人か、というと、そういうわけではない。
ビートたけしが太田プロに来たときに、「よぉ、キクチさん!」と、キクチさんに声をかける。
つまり、 ビートたけしが来たときに、キクチさんがいると安心するというのだ。
その一点において、キクチさんの存在価値はある、というのである。
どんなに周囲から「必要がないのではないか?」と思われていても、実は「ここぞ」というときに、誰にもできない役割を果たすことがある。
友人から、こんな話を聴いた。
その職場には、Xさんという人がいて、この人がまあ、頓珍漢で「使えない人」なのだそうだ。
ところがあるとき、そのXさんが、頭の固い職場の上司に本質を突くような「ひと言」を言って、上司をギャフンと言わせたというのである。
そのひと言に、ふだんから上司たちに不満を持っていた人たちは拍手喝采したという。よくぞ言ってくれた、と。
10年近く一緒に仕事をしてきて、Xさんははじめて高く評価されたのである。
「そのときはじめて、ひょっとしたらこの人、使えるんじゃないか、って思っちゃいました」
「なるほど。でも10年間も潜伏期間があったわけですから、「化ける」かどうかは、セミよりも待たなければなりませんね」
「たしかにそうですね」
「そういうことでいうと、そちらの職場にQさんという人がいるじゃないですか」
「ええ」
「あの方も、職場に長くいらっしゃるけれど、気の毒なことに「まったく使えない人」なんて周りからは言われてますね」
「そうですね」
「私は、『ここぞ』という時に言うQさんの「ひと言」が、周りを救うような気がするんですよ」
「そうでしょうか。今までそんなこと、一度もありませんでしたよ。あなた、見たことないでしょう?」
「見たことはありません。でも何かそんな感じがするんです」
「マネージャーのキクチさん」は、たぶんどこにでもいるのだ。
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