もしも主人公が痛風だったら
映画「人間の條件」(五味川純平原作、小林正樹監督)を、途中まで見ているところだが、仲代達矢が演じる主人公の梶の人生は壮絶である。
戦争に翻弄されながらも、強い意志をもって過酷な運命の中を生き抜くのである。
そんな梶の人生にくらべたら、私の今の状況など、たいしたことではないのだ。
しかし、である。
そんな過酷な運命を生きる梶でも、痛風のつらさは知らない。
もし梶が痛風に苦しんでいたら、あれほどの不屈な反骨精神を持続し得たか、はなはだ疑問である。
痛風の痛みは、そんな強靱な精神までをも削いでしまう力を持っているのである。
そう考えると、彼が過酷な運命を生き抜くことができた一番の理由は、彼が痛風でなかったからだ、ともいえる。
たとえば、映画「人間の條件」の中で、梶が所属する隊が重い荷物を持って長距離を歩かされる訓練をする場面がある。
もし私が二等兵として、しかも痛風の発症中にこの訓練があったら、と思うと、ぞっとする。
まず、足が痛くてとても歩くことはできないだろう。
足の激痛をこらえながらそろーりそろーりと歩いていると、当然隊列からかなりおくれをとってしまう。
上官殿は、もちろんお怒りである。
「貴様、怠けているのか!」
「いえ、足が痛いのであります」
「嘘つけ!歩きたくないからそんなことを言っているのだろう!」
「いえ、痛風であります」
「痛風だと?痛風がそんなに痛いはずがあるまい!」
「いえ、かなり痛いであります!」
「お前、俺が痛風を知らんと思って、嘘を言っておるな」
「いえ、違うであります」
「うるさい!お前の気がたるんでる証拠だ!」
かくして私は上官殿から拷問を受けることになるのである。
もし、痛風の人間が戦場に送られたら、と思うと、ぞっとする。
痛風の苦しみがわからない人には、この恐怖は永遠にわからないだろう。
だから私は提唱したい。
痛風で苦しむ人間が主人公の戦争映画を作るべきだ、と。
ま、ほとんど「イタイイタイイタイ!」と言ってるだけで、ストーリーはまったく展開しないと思うが。
足が痛くって、進むことも、逃げることもできない。戦場では、まったく使い物にならない。自然と匍匐前進をすることになる。味方の上官には「怠け者!」となじられ、敵を目の前にしてはなすすべもない。
痛風で苦しむ主人公から見た戦場は、そうでない人以上に、理不尽な世界に映るだろうと思う。
それだけは、確実に言える。
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コメント
クララが…クララが立ってる。
痛風なのに。
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カーンチ、尿酸値の検査しよ(ハート)
ずっけーなあ。
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ドラえも~ん、痛風が痛いんだよ。何とかしてくれよお。
(効果音)
ハイ、人間切断機。
ど、どらえも~ん(泣)
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(お見合いに遅れて来たキョヌ)
(涙を流す「彼女」)
おばさん あら、二人、知り合いだったの?
(テーブルの下で手をつなごうとして、「彼女」の脚に触れるキョヌ)
彼女 イタッ。痛風なんだから、さわるんじゃないよ(パンチ)
(エンドロール)
投稿: もしもこぶぎ | 2015年9月17日 (木) 12時55分
「痛風西遊記」
不思議な力を持つ孫悟空にも、1つだけ弱点があった。
それは、孫悟空が調子に乗りすぎると、三蔵法師が呪文を唱えて、孫悟空の左足に痛風の発作を起こさせるというものである。
「孫悟空、調子に乗りすぎじゃ!反省せい!」
そう言って三蔵が呪文を唱えると、
「イタタタタタ!」
と、左足に激痛が走り、とたんに歩くのが億劫になるのである。
そんな痛風持ちの孫悟空が、大活躍する物語。「痛風西遊記」!
…「もしも主人公が痛風だったら」のコーナー、まだまだネタをお待ちしております。
投稿: onigawaragonzou | 2015年9月18日 (金) 01時47分
どうだろう、豚肉を紹興酒で煮て、食べやすいように一口ずつに切り分けて振るまうというのは。
蘇軾さま、それは名案でございます。きっと蘇軾さまのお名前がついた有名な料理となることでしょう。ただ...
なんじゃ?
プリン体が通風にはちと心配かと。
投稿: 明智こぶ郎 | 2015年9月19日 (土) 12時36分