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タメ口論争

10月24日(土)

空港へ向かう電車に乗っていた時のこと。

途中の駅から、3人が乗ってきた。

1人は、白髭をたくわえて姿勢のよい、三つ揃えを着たスリムな老紳士。

1人は、派手に化粧をした中年の女性。

1人は、20代前半くらいの、ローラに激似の美人な女性。

私の隣の席が一つだけ空いていた。

「先生、どうぞお座りください」

「いえ、私はけっこう」

「先生、座んなよ」

「いえ、本当にけっこう」

「じゃあ、ママ座んなよ」

「じゃあ失礼して」

話の様子から、女性2人は親子で、老紳士は、その女性2人にとって「先生」と呼ばれている存在だということがわかった。

いったいこの3人はどんな関係なのか?ついいつもの悪い癖で、気になってしまった。

母親の方はどう見ても純粋な日本人である。

ローラ似の娘は、ハーフである。

そう思ったのは、会話の端々に英語の単語が出てくるからである。

会話を注意深く聞いていると、「オーストラリアでは…」という話がしばしば出てきたので、ローラのお父さんは、オーストラリアの人らしい。

母親は、「先生」に対して敬語を使うが、娘のローラの方は、終始タメ口である。

この「先生」は、母親にとっての「先生」なのか?娘にとっての「先生」なのか?

会話の様子から、この老紳士はかなりの博識である。

大学の先生なのか?

しばらく会話を聞いていると、なんとなくわかってきた。

この老紳士はどうも武道の先生のようで、この老紳士のもとで、ローラが武道を習っているらしい。つまりこの「先生」は、娘の武道の先生である。

空港行きの電車に乗ったということは、旅行に出かけるということである。

荷物が軽装なのと、向かう空港が国内線の空港なので、海外ではなく、国内であることは間違いない。

いったいこの3人はどこに行くのか?

ふつうならば話はここまでで終わる。

電車が空港の駅に近づく頃になって、私の隣に座っていた母親が、突然思い立ったようにほかの2人に言った。

「あら!私たちの乗る飛行機、どっちのターミナルだったかしら」

そう言うと、カバンから封筒を取り出した。

封筒から航空機のチケットを取り出し、どっちのターミナルかを確認しようとした。

「書いてないわねえ」

横に座っていた私が見るともなく見ると、そこには行き先として、中国地方の空港名が書かれていた。

そればかりではない。

チケットを入れていたその封筒には、チケットに書かれている空港と同じ県にある武道館の名前が印刷されていた。

つまりこの3人は、その県にある武道館に行く可能性が極めて高い。

では、何のために行くのか?

後に調べてみると、翌日の25日にその武道館で総理大臣賞争奪の女子剣道大会が開かれることがわかった。

これで、完全に解決した。

ローラは、翌日にその武道館に行われる女子剣道大会に出場することになり、お母さんと武道の「先生」がその付き添いとして、飛行機で向かうことになったのだろう。

…ま、ここまではどうでもいい話なのだが、私が気になったのは、ローラ、つまり娘の方が一貫して母親や「先生」に対して「タメ口」をきいている、ということである。

最近、世に「ハーフタレントタメ口論争」なるものがあって、ハーフタレントがテレビで軒並みタメ口を使うのはなぜか、ということが話題になっている。

ハーフタレントがタメ口を使うのは、もともと英語に尊敬語がないから、小さい頃から尊敬語の概念がなく、そのために日本語でも尊敬語を使用せずタメ口になるのだ、というまことしやかな言説が流布している。

これに対して、それは全くの嘘で、たまたまタレントのローラがタメ口でしゃべっているのが人気を博したから、ハーフタレントが、タメ口を自分たちの「記号」として使い始めたのだ、という説もある。つまり芸能事務所の戦略として無理にキャラ付けされたのだ、という説である。

私自身は、前者の説は「都市伝説」であり、さまざまな偏見を含んだ言説であると断じ、後者の説を支持してきた。

だが、ここへ来て自説が揺らぎ始めた。

電車の中で見たローラ似の女性は、老紳士の「先生」に対して終始タメ口を使っていて、この姿勢を一切崩すことがなかった。しかもごく自然に、である。

しかも驚いたことに、「先生」にタメ口を使うことに対して、母親も何の注意もしていないのである。武道の先生もしかり、である。

ということは、やはり「タメ口文化」というものが存在するのだろうか?

…ま、これもまた、どうでもいい話である。

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