水谷豊版寅さん
念願かなって、日本テレビの土曜グランド劇場の枠で放映された「あんちゃん」(水谷豊主演、1982~83)を見た。
「宇佐木温泉」という架空の温泉町を舞台に、実家のお寺を継いで僧侶となった田野中一徹(水谷豊)が、町で起こるさまざまなトラブルを「人のよさ」で解決していきながら、自分自身も成長していく、という物語。全26回。
私が中学生の頃にリアルタイムで見ていて、最も好きなドラマだったのだが、内容はほとんど忘れてしまっていた。今回あらためて見直してみて、このドラマが、私の人格形成に大きな影響を与えたドラマであることを、あらためて実感したのである。
それとともに、水谷豊の達者な演技に、あらためて感銘を受けた。
寅さんを演じた渥美清が「国民的俳優」だとしたら、それを継ぐ者は、西田敏行ではない。水谷豊である!
このドラマを見て、その意を強くした。
実際、この「あんちゃん」は、「男はつらいよ」の世界観にとても近い。
水谷豊演じる「あんちゃん」が「寅さん」だとすれば、
伊藤蘭演じるその妹・徳子は「さくら」。
三浦洋一演じる土建業の音次は「タコ社長」。
それぞれの人間関係の距離感も、「男はつらいよ」のそれと一致する。
出演している役者は全員芸達者。内容も軽妙で、上質なシットコム(シチュエーションコメディ)になっている。
1話1話が、それぞれ独立したエピソードになっていながら、回を重ねるごとに登場人物のキャラクターが次第に一人歩きし始め、ストーリーの大きな流れを作っていく。
もし自分が脚本家なら、こういうドラマを書いてみたいと思うのだが、こういったタイプのドラマは、いまでは作れないんだろうな…。
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