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1年10カ月めの贈り物

11月28日(土)

「前の職場」のイベント、3日目。

午後、会場に行くと、昨年の3月に卒業したSさんがいた。私が「前の職場」で最後に送り出した卒業生の一人である。

「先生、お久しぶりです」

「おおぉぉ!久しぶりだねえ」

「ここに来れば、先生にお会いできると聞いたもので…」

「わざわざ来てくれたんだね」

「実は今日、どうしても先生にお渡しなければならないものがあったので、来たのです」

「どうした?」

「私、Nさんから預かっているものがあるんです」

「N君から?」

N君というのは、2年前の3月に卒業し、民間企業に就職したN君のことである。Sさんの1年先輩にあたる。

「正確には、Nさんからではなく、Fさんから預かったんですけど」

「どういうこと?」

Fさんというのは、Sさんと同じ年度の卒業生である。

「昨年の2月ごろに、先生がこの大学をお辞めになると聞いたNさんが、勤務先の東京から先生に会いに来たことがあったでしょう?」

「そういえば、そんなことがあったねえ。そのとき、何人かで一緒に飲んだよ」

「そのとき、Nさんが、先生にプレゼントを用意していたそうなんです」

「ほう」

「ところがNさんは、プレゼントを先生に渡すのを忘れたまま別れてしまったので、そのプレゼントを、Fさんに託したそうなんです」

「…思い出した!!!」

私は急に思い出した。

1年9カ月ほど前に「詰めが甘い学年」という記事を書いた。以下、そこからの引用。

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先日、東京に就職したN君が私に会いに来た、という話は、ここに書いた

そのとき、私にお土産を持ってきてくれたらしい。

しかし、お土産を私に渡すのをすっかり忘れてしまって、それに気がついたのが、帰りの最終の新幹線に乗る直前だったという。

この時点で、すでに詰めがあまい。

たまたま在学中のFさんが、N君と一緒に駅に向かっていたので、N君は帰り際、Fさんに「これを先生に渡しておいて」と、お土産をFさんに託した。

数日後、Fさんが「卒論発表会」のレジュメの添削の件で、私のところに来たとき、

「あ!」と叫んだ。

「どうしたの?」と聞くと、

「先日N君がこちらに来たときに、N君が先生にお土産を渡すのを忘れたといって帰りがけに私に預けていったんですが、そのお土産を、今日持ってくるのを忘れました」という。

これもまた、詰めがあまい。まさに「詰めのあまさ」の連係プレーである。

この3月に卒業予定のFさんは、すでにこちらのアパートを引き払い、隣県にある実家に戻ってしまったので、大学にはめったに来ないのだ。

「今度でいいよ」

というと、

「いつになるかわかりません」

という。果たして私は、N君からのお土産を、受け取れるのだろうか。一生受け取ることができないような気がする。

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引用終わり。

N君が持ってきてくれたお土産というのが何なのか、それからずっと気になっていたのである。

Sさんが続けた。

「実はそのプレゼント、私がずっと預かっていたんです」

「え?どういうこと?」

「昨年の2月の終わりに、追いコンがあったでしょう?」

「覚えてるよ」

「Fさんが追いコンに参加できないというので、Nさんから預かった先生へのプレゼントを、私に託したんです」

なんと、N君からのプレゼントは、Fさんから、Sさんの手に渡っていたのか!

「で、私、追いコンのときに、そのプレゼントを先生に渡そうと思っていたのに、それを渡すのをすっかり忘れてしまったんです」

「そうだったの?」

「その年の4月に、先生はこの土地を離れてしまったし、私も社会人になってしまったので、結局渡す機会がなくなってしまいました。でもそのことがずっと気になっていて、いつか先生にお渡ししなきゃ、と思っていたんです」

「それで、今日ここに来たってわけか」

「そうです」

話を整理してみよう。

N君が、勤務先の東京から私を訪ねてきたのが、2014年2月5日。

そのとき、私へのプレゼントを渡しそびれて、それをFさんに託した。

ところがFさんは、私にそれを渡す機会がないまま卒業してしまうかも知れないと思い、今度はSさんにそれを託した。

Sさんは、2014年2月28日の追いコンのときに、Fさんから預かったN君のプレゼントを私に渡そうと思ったが、そのことをうっかり忘れてしまい、現在に至った、というわけである。

そして今日、約1年10カ月めにして、ようやくそのN君からのプレゼントが、私のもとに届いたのである。

長生きはするものだなあ。

私はわざわざそのプレゼントを持ってきてくれたSさんに感謝した。

ところで、そのプレゼントとは、いったい何なのだろう?

私は当時、お菓子か何かだと思っていた。

もしお菓子だったら、賞味期限はとっくに過ぎているはずである。

袋の中身を確認しようと思ったところ、イベントが始まってしまい、袋を開けるチャンスを逸してしまった。

夜、宿泊先のホテルに戻り、ようやく袋の中身を確認することができた。

Photo高級ボールペンではないか!

私にとって最も嬉しいプレゼントである。

N君、1年10カ月の月日がたってしまったが、ありがとう。

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