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御神体の村

11月20日(金)

僕、金田一耕助です。

日和警部から、

「あんたに見てもらいたいものがあるんじゃ」

といわれ、ある村の小さな神社にある、御神体を見に行くことが決まったのは、つい数日前のことでした。

それは、不思議ないわれのある御神体でした。

江戸時代に地中から発見されたその世にも貴重なそのモノは、たちまち当時の有名な学者の目にとまり、御神体として神社に奉納されたのだそうです。

さて僕は、朝早く家を出て、まず鉄道でその村の最寄りの駅まで行きました。

その駅で日和警部と待ち合わせをし、そこから車に乗って1時間ほどで、その村に着きました。

村では、案内人のSさんが待っていてくれました。

「これから、神社の宮司(ぐうじ)様に会っていただきます」

「はぁ」

「まず、宮司(ぐうじ)様のご説明を聞いていただきます。これが20分ほどかかります」

「はい」

「これから見せていただくものは御神体なので、くれぐれも宮司様に失礼のないようにお願いします」

「わかりました」

神社に着くと、すでに宮司様が待っておられました。

「遠いところ、ようこそおいでくださった」

案内人のSさんの言うとおり、宮司様のご挨拶と説明は、20分ほど続きました。私と日和警部は、そのお話を熱心に聞き、失礼のないように受け答えをしました。

「では、御神体を御覧に入れましょう」

神社の本殿に移動し、いよいよ宮司様により、本殿の扉が開けられました。

「これが御神体ですか…!」

私と日和警部は、息を飲みました。御神体があまりにすばらしいものだったからです。

宮司様の説明をうかがいながら、私たちはすっかりその御神体に魅せられてしまいました。

「これまで、この御神体を見に来た人は数限りないです。私はそのたびに、この本殿の扉を開け、御神体を照らして、ご説明を申し上げました」

そう言うと宮司様は、次々と有名な人の名前を挙げていきました。

なるほど、これまで多くの人たちが、この御神体に魅せられてきたのは当然だろうと思いました。

そしてそのときふと僕は、御神体を見た印象が、自然と口をついて出ました。

まるで事件の謎を解くかのように、私は自然と語り出したのです。

宮司様、案内人のSさん、そして日和警部は、僕の語ることに、次第に大きくうなずくようになりました。

そして宮司様は最後に言いました。

「いやあ、実におもしろい。実に貴重なお話じゃ」

気がつくと、神社におたずねしてからすでに1時間半もたっていました。

「長居をしてしまい、申しわけございません」と僕が宮司様に謝ると、

「いえ、時間がたつのも忘れました」

とおっしゃいました。

気がつくとあたりは少し暗くなりはじめていました。

僕たちは宮司様にお礼を申し上げ、その神社をあとにしました。

宮司様と別れてから、案内人のSさんは僕と日和警部に言いました。

「いままで私は何人もの方をこの神社に案内して、一緒に御神体を拝見しましたが、これほど長い時間、御神体と向き合った方々は、あなた方お二人だけです」

「そうですか」

「そして金田一さん、長年私もこの御神体を見てきたが、あなたの推理に刺激を受けましたよ」

「とんでもないことです」

僕は照れくさくなり、頭を掻きむしりました。

「やはり、あんたを連れてきて正解じゃった」

今度は日和警部が僕にそうおっしゃいました。

かくして、村の小さな御神体をめぐる僕の推理は、ひとまず幕を閉じたのです。

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コメント

小沢栄太郎と加藤嘉のLINEコント
なんて、ネタ振りされても
書けっこない。

        これは少々無茶ぶりが過ぎ
        ましたな。

しかも、今度は犬神家の一族に
なぞらえてミスリーディングを
企む悪行三昧。

        信州だの、犬神だのと散々
        振り回されたようじゃな。

犯人は上手く逃げおおせたと
思っていようが、さにあらず。
こちらにおわす方をどなたと
心得る。

        では、そろそろ懲らしめて
        やりなさい。

よい子の皆さん、ちなみに
これはLINEのようですが、
矢文(やぶみ)のやりとり。

        江戸時代にそのようなもの
        などありませんからな。

        カッカッカッカー。

投稿: 明智こぶ郎 | 2015年11月23日 (月) 23時09分

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