北へ北へ
11月26日(木)
「前の職場」で3日間にわたっておこなわれるイベントに参加するため、北に向かう。
前日、県南のN市のKさんからメールが来た。仕事のことで相談があるという。
「明日、たまたま『前の職場』に行くことになっています。開始時間は午後ですから、新幹線を途中下車して午前中にお寄りしますよ」
ということで、急遽途中下車することにした。
予定が一つ増えたということだから、朝早く家を出なければならない。
朝7時過ぎに家を出て、県南のN市に着いたのが午前11時。
そこで1時間ほど仕事の打ち合わせをした。
「駅までお送りします」
Kさんの車に乗せてもらい、駅に向かう途中、ひらめいた。
「あのう、センターはここから近いですよね」
「ええ」
センター、というのは、私が「前の職場」にいたころ、たいへんお世話になった機関である。N市の北に接するK市にあった。そこには何人もの知り合いがいた。ただ、少しばかり、というかかなり不便な場所にあるため、車でなければなかなかたどり着けないところなのである。
少し時間があるので、立ち寄って挨拶だけしておいとましよう、と思いついたのであった。
「お願いがあるんですが、駅ではなく、センターまで行ってもらえませんか?そこで降ろしてください」
「わかりました」
Kさんはわざわざ遠回りして、センターまで乗せてくださったのである。
センターに着くと、Tさん、Iさん、Sさん、Aさんなど、私がかつてお世話になった人たちが勤務していて、突然訪れた私を見てびっくりした様子だった。
「どうしたんです?いったい」
「今日は午後に『前の職場』でイベントがありましてね、それまでちょっと時間があったんで、途中下車して立ち寄ってみたんです」
「本物ですよね?」
「ええ、本物です」
「ああ、びっくりした」
幽霊か何かだと思ったらしい。
そりゃあそうだ。ふつうだったら、私がここにいるはずはないんだもの。
1時間ほどみなさんとお話をした。
「これからどうするんです?」
「鉄道で北に向かいます。『前の職場』のイベントに出席するので」
「じゃあ、最寄りの駅まで車でお送りしますよ」
ということで、車で最寄りの駅まで送ってもらうことにした。
車中。
「今日はびっくりしました」とTさん。
「突然思い立ってご挨拶に来たんですが、たくさんの人にお会いできてよかったです。知ってる人が誰もいなかったら、どうしようかと思いました」私は続けた。「私は時々思うんですよ。お世話になった人たちにいっぺんにこれだけたくさん会えるというのは、死期が近いんじゃないかってね」
そういうと、Tさんは大笑いした。
「また来てくださいよ」とTさん。
「今度は事前にご連絡しますので」
無人駅でお別れした。
こうして私は、今回の旅の本来の目的である「前の職場」のイベント会場に向かったのである。
翌日(11月27日)。
2日目のイベントの開始時間も、午後である。
それまで時間があったので、私は「前の職場」のある町から、鉄道でさらに北の町に向かった。
その町の駅から少し離れたところに、かつて一緒にボランティア活動をしたTさんの職場がある。
Tさんの職場ではいま、私も少しかかわったボランティアのパネル展示がおこなわれている。それを見に行こうと、思い立ったのである。
「ご無沙汰してます」
「わざわざおいでいただいたんですね。ありがとうございます」
30分ほど展示を拝見しながらお話をしていたら、「前の職場」に戻らなければならない時間になってしまった。
「駅まで車でお送りしますよ」
ご厚意に甘え、送ってもらうことにした。
「わざわざありがとうございました」
「またお目にかかります」
北へ北へと、かつての仲間と再会していく旅。今回は多くの人たちと再会した。
そして私は確信した。
死期が近いな、と。
実は、私が訪れた場所は、もう一つあった。(つづく)
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コメント
ご無事で旅を続けられたことを知り安心しました。寒い無人駅に置き去りにしてしまったことを、ずっと後悔しておりましたのでε-(´∀`*)ホッ。きっと長生きします。
投稿: T | 2015年11月29日 (日) 12時47分