テレビドラマ版ダブルキャスト・その2
映画版とテレビドラマ版のダブルキャスト問題を考えると、楽しくなってしまうのだが、考えてみると、いちど映画化された作品が、のちにテレビの連続ドラマになるという事例は、それほど多くない。
1970年代末に放映された「横溝正史シリーズ」から、「犬神家の一族」「獄門島」「悪魔が来たりて笛を吹く」「悪魔の手毬唄」「八つ墓村」「女王蜂」、「森村誠一シリーズ」から「人間の証明」「野性の証明」、「高木彬光シリーズ」から「白昼の死角」。
これらはいずれも、角川映画と深い関わりがある。つまりこの当時角川春樹が仕掛けた「メディアミックス戦略」といえる。
あと私が覚えているのは、
「飢餓海峡」(映画は1965年、連続ドラマは1978年)
「日本沈没」(映画は1973年、連続ドラマは1974年)
「白い巨塔」(映画は1966年、連続ドラマは1978年)
「八甲田山」(映画は1977年、連続ドラマは1978年)(ドラマ版は筆者未見)
「あゝ野麦峠」(映画は1979年、連続ドラマは1980年)
「二百三高地」(映画は1980年、連続ドラマは1981年)
くらいである。
どれも大作映画ばかりだが、ここで気づくのは、大作映画の連続テレビドラマ作品が、1970年代末から1980年代初頭に集中的に製作されているということである。角川映画の「メディアミックス戦略」も同時期であることをふまえると、この時期に特徴的な現象といえるだろう。
さて、これらのテレビドラマ版のうち、「飢餓海峡」「日本沈没」「八甲田山」の3本に登場する役者がいる。
それは、村野武範である!
「飢餓海峡」では、映画版で高倉健が演じた「味村刑事」役を演じている。
「日本沈没」では、映画版で藤岡弘が演じた「小野寺俊夫」役(主役)を演じている。
「八甲田山」では、映画版で北大路欣也が演じた「神田大尉」役(主役のひとり)を演じている。
大作映画の連続テレビドラマ化作品に、これほど多く登場する役者は、他にはいない。ましてや、この3本の大作映画にすべて出演した役者もいないのだ。しかも、高倉健、藤岡弘、北大路欣也とのダブルキャストである!
村野武範は一時期、テレビドラマ界を席巻していた。
そして当時、彼は「正義感の強い清廉な青年」という十字架を背負わされていたのだ。
のちに軽妙なトークとコミカルな人柄でバラエティ番組の司会をするようになるのだが、ひとりの役者の人生、いや、人間の人生を考えるとき、村野武範のたどった道のりは、実に興味深いといわざるを得ない。
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