12月20日(日)
羽田空港でみなさんと解散したのが午後5時40分。
さあバスで帰ろうと思い、チケット売り場に並んでチケットを買う。
自宅の最寄りの駅まで行くバスの出発時間は18時15分である。
少し時間があるなあと思い、到着ロビーにあるベンチに腰掛けたところ、あることに気が付いた。
…デジカメがない!
ジャケットのポケットに入れていたはずのデジカメが、ないのである。
カバンの中をひっくり返して探しても、デジカメは見つからない。
これまで撮りためた写真が、パーになってしまった!!!
落ち着け!落ち着けよ!
必死で記憶をたどる。
飛行機の窓側に座った私は、離陸後に、デジカメを取り出して外の景色を撮ったりしていた。
それが一通りすむと、私はジャケットの左ポケットにデジカメを入れたのである。
ここまでは、明確に記憶がある。
とすれば、考えられるのは、次の二つである。
一つは、ポケットに入れたつもりが、そのポケットをかすめて、座席のところに落ちてしまった可能性。
もう一つは、羽田空港に着陸して、荷物をまとめて立ち上がったときに、ポケットからデジカメが落ちてしまった可能性。
いずれにしても、デジカメは、乗っていた飛行機の、座っていた座席付近に落ちている可能性が高い。
デジカメは、まず間違いなく、飛行機の座席付近に落としたのだ!
そこまで思考を整理したあと、急いで航空会社のカウンターに向かう。
この時点で私は、デジカメを必ず取り戻せると確信していた。
実は、以前もデジカメを飛行機に忘れたことがあるからである。
このときは、デジカメをなくしたことも気づかずにいたのだが、翌日くらいに電話がかかってきた。航空会社からである。
デジカメを落としませんでしたか?という質問に、はじめて自分がデジカメをなくしたことに気づいたのだった。
そのデジカメは、私が座っていた座席に落ちていて、そのときの飛行機に乗っていたのが私であることを航空会社が突き止め、私に連絡が来たのである。
数日後、デジカメが私のもとに郵送されてきて、事なきを得たのだった。
このときの航空会社の丁寧な対応に、心底驚いたのである。
…その経験があったので、今回もまた、きっと見つかるだろうという確信があったのだ。
それともう一つ。
映画「ハッピーフライト」を見ていて、航空会社のグランドスタッフが、客の小さなトラブルを全力で解決する、みたいなシーンが、たしかあった。
そのシーンのことを覚えていたので、もし私が、グランドスタッフになくしたデジカメのことを尋ねたら、きっと全力で探してくれるだろう、と確信したのである。
さて、出発ロビーにある航空会社のカウンターまで走ると、いかにも映画「ハッピーフライト」に出てきそうな、グランドスタッフの女性が立っていたので、さっそく尋ねてみた。
「あのう、…先ほど到着した飛行機の中に、デジカメを忘れたようなんですけど」
私は、○○空港発の○○便で、座席番号が19Kで、デジカメのメーカーが○○で、色がシルバーで、タバコの箱の大きさをしている、といった情報を冷静に、そして正確に伝えた。
「かしこまりました。では確認してみます」
そういうと、グランドスタッフの女性は、すぐに関係各所に電話をした。
「かくかくしかじかで、デジカメのお忘れ物は届いておりませんでしょうか。座席は、19のキングです」
19のキング?
そうか!私の座席は19Kだったのだが、「K」をそのまま発音すると聞き間違えられる可能性があるので、「キング」と言ったのか!
これこそ業界用語だ!いよいよ映画「ハッピーフライト」みたいになってきたぞ。
少し経って、グランドスタッフの女性のもとへ折り返し電話がかかってきた。
「…そうですか。わかりました」
電話を切ったあと、グランドスタッフの女性が言った。
「お客様、デジカメがあったそうです」
「そうですか!」
私は安堵した。しかし一方で一つ心配事が。
「あのう…バスの出発時間が6時15分なんです」
時計を見ると、いまちょうど6時である。
「わかりました」とグランドスタッフの女性。「バスの出発時間に間に合うように、いまから私が取ってまいります」
そう言うと、グランドスタッフの女性が走り出した。
そして、6時10分。
無事に、デジカメは私のところに戻ってきたのである!
「ありがとうございます。助かりました!」
このときほど、グランドスタッフの女性が神様に見えたことはない。
映画ならば、ここで二人は恋に落ちるはずである!
だって、私のためにここまで全力を尽くしてくれた人なんだもの。
しかし現実はそんなことはない。
私は余韻に浸る間もなく、バス乗り場へと走っていった。
帰宅してこの顛末を妻に話すと、
「映画だとね。トラブルを起こした男性がイケメンなんだよ」
つまり、そこが映画と現実の違いらしい。
まあそんなことはともかく。
そのグランドスタッフの的確な対応はすばらしいもので、些細なトラブルにも厭わずに対応してくれるグランドスタッフの方たちを、あらためて尊敬したのであった。
航空会社は、こういうスタッフの人たちによって支えられているのだ。
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