思わず身内に話したくなる存在
11月30日(月)
「前の職場」への3泊4日の旅から帰ってきたが、もうしばらく、この旅の出来事について書く。
卒業生や学生たちと飲んだ日の帰り。
私の泊まるホテルはすぐ近い場所にあったのだが、卒業生や学生たちは、それぞれ自宅までの距離が遠かった。それに夜も遅く、小雨も少し降っていて、ひどく寒い晩だった。
お店を出て、帰り道をみんなで一緒に歩いていると、卒業生の一人が、道路のわきにとめてある車に近づいた。
すると、車の中から、背広を着た一人の青年が出てきた。
「先生、前に話した、私の彼氏です」
卒業生の一人が、自分の彼氏を呼び出したらしく、彼氏が車で迎えに来ていたのだ。
青年は折り目正しく私にお辞儀したあと、自分の恋人であるその卒業生の方を向いて聞いた。
「この方が、いつも話に出てくる先生?」
「そう。鬼瓦先生」
「いつもお世話になっております」青年は再びお辞儀をした。
「こちらこそ、お話は聞いていますよ。最初は遠距離恋愛だったんでしょう?」
「はぁ」青年はそう言うと、再び卒業生の方を向きなおし、「そんなことまで話したの?」と聞いた。
「そうだよ」と卒業生は彼氏に答え、今度は私に言った。「私たち、この車に乗って帰ります」
「そう、お気をつけて」
「またお会いしましょう」
卒業生と学生たちは車に乗り込み、去って行った。
…こんな些細なことを書いたのは、「身内の話題にのぼる人間」になることが、私にとって何よりも嬉しいことだからである。「身内」という言葉は、「友人」や「恋人」などに置き換えてもよい。
実は私がひそかにめざしているのは、
「思わず身内に話したくなる存在」
なのである。
私に会ったこともないお身内の方が、その人から繰り返し話を聞くことで、まるで以前から私を知っているような感覚にとらわれる。
そして、何かの機会にそのお身内の方に初対面したとき、まるで以前から知っているような感じで私にご挨拶してくれる。
そんなときが、いちばん嬉しいのである。
なぜ、嬉しいのか?
それは同時に、「『私』のことを身内に話す人」との、親しさの証しでもあるからだ。
…言葉で説明するのは難しいなあ。わかるかなあ、この感覚。
うんとわかりやすく言えば、
「この人が寅さんですよ。ほら、いつも話してるでしょう?」
「あなたが寅さんですか。いつも話は聞いております」
みたいな存在のことだ。
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