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ラジオDJの憂鬱

最近、芸能界を揺るがせた事件といえば?

そう。

あるお笑いコンビの一人が、都内の高校に侵入して女子高生の制服など24点を盗んだとして窃盗及び建造物侵入の容疑で警視庁に逮捕された、という事件である。

その人物は、20年前から同様の行為をしていたと供述し、自宅からは制服など約600点が押収されたという。

この人物、実は8年ほど前にも痴漢の容疑で逮捕されたが、このときは、不起訴処分となっている。

彼はこのあと、芸人として復帰したのだが、このたびの逮捕で、おそらく復帰は絶望的だろう。

この事件を、忸怩たる思いで見ていたのが、私と同世代のラジオDJである。

8年ほど前、このラジオDJは、この芸人とラジオ番組で共演していた。彼が復帰したあと、ラジオDJは、「その芸人がそういう犯罪をするヤツとは、とうてい思えなかった」と発言した。つまり、「その芸人を信じていた」と発言したのである。

しかしそれは、結果的に裏切られる形となったのである。

先日、ラジオDJは、いつもはおふざけの深夜番組で、いつになくまじめに、この事件のことについて語り始めた。

「自分は7~8年前に、彼に痴漢の容疑がかかった時に、自分の番組の生放送で、今思えばとてもみっともなくて、間抜けで、恥ずかしいことを言ってしまった。

僕はその時、『職業柄、人と目を見て喋った上で、その人を見る目は、それなりにあると思う』と前置きした上で、痴漢の容疑について、『そいつはそういうことをするヤツだとはとても思えないんだよな』という話をした。

結果的に、今思えばとてもみっともない結果になった。

僕がラジオをやるための免許、というか、僕がラジオをやり続けてもいいって、僕に対して思うかどうかは、このことを喋ることだと思っている。

『人を見る目があると思う』って前置きをした上で、『やってないと思うし、やってないと思いたい』って言ったことに関して、反省してるし、『バカだな、お前』って思う人は笑って欲しい。

『アイツ、みっともねぇな。何の見る目もないじゃん』って、その通りなんだ。その通りだから、そこは笑って欲しいし、逆に、とてもじゃないけど笑えない立場の人もいると思う。

とてもじゃないけど笑えない立場の人は、僕のことを憎んでほしいと思う」

この後も発言は続くのだが、私がこれを聴いて思ったのは、引用した最後の部分である。

彼がいちばん言いたかったのは、ここなのではないだろうか?

8年前の痴漢事件が、冤罪なのかそうでないのか、今となってはわからない。

だが、同じお笑い界の仲間であり、自分の番組のレギュラーであったその人物を、なんの根拠もなく擁護してしまったことが、結果的に、その人物に苦しめられた人(つまり被害者)に、さらに苦痛を与えることになったのではないだろうか?

「とてもじゃないけど笑えない立場の人もいると思う」というのは、そのことを指していると思う。

そのことを考えたときに、軽はずみでもその人物を擁護してしまったことが、悔やまれたのである。

ラジオDJは、それを決して些細な問題ではないと考え、あえて「憎んでほしい」と発言したのだ。

そしてここに、ハラスメント問題の本質があるのだと思う。

加害者の周囲の人物が、仲間だという理由で軽はずみに擁護したり、あるいは擁護したことが結果的に間違いだったことに対して、被害者にそれをきちんと伝えることを怠ったり。

それが、二次的な被害を生む可能性を持っているのである。

多くの人は、そこに対する想像力をはたらかせようとはしない。

だから、自分とは関係のない問題だと思ってしまうのだ。

このラジオDJは、言葉を扱う職業人として、そこだけははずしたくなかったのだろう。

だからあえてこんな発言をしたのだろう、と私は解釈する。

こんなふうに想像力をはたらかせた人たちが、どれくらいいたのか。それは大変興味深い問題である。

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