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紅白歌合戦とおせち料理

紅白歌合戦の奇祭っぷりが、ますます凄いことになっている。

もうあそこまでくると、ナンダカヨクワカラナイ。

ちょうど、上村達男『NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか』(東洋経済新報社、2015年)を読んでいたところだったので、この本を念頭に置きながら紅白を見ると、実に味わい深い。

歌う側も観客も視聴者も、おそらく誰も望んでいないであろう「東京五輪音頭」が、なぜ歌われたのか?

なぜ唐突に、あの痛々しい「アニメ紅白」なるコーナーが行われたのか?

なぜ日本を代表する男性アイドルグループが、わざわざあの番組に出演したのか?

なぜベテラン演歌歌手が歌っている周りで、異性のアイドルグループが踊り回るのか?

すべてが奇祭感満載だが、少し踏み込んで考えれば、いまのNHKの構造的問題が、よくあらわれている。

そう、「神は細部に宿る」のだ!

美輪明宏の「ヨイトマケの唄」は、最初、紅白で歌われた2012年のときにはインパクトがあったが、2度目となる今回は、まるで再放送を見ているかのようだった。

かつて「放送禁止歌」とされていた歌が、なぜいまになって、かくも紅白でリピートされるのか?

かつてとは異なる文脈でこの歌が受け取られているからこそ、重宝されているのだと勘ぐらないわけにはいかない。美輪明宏の思いとは別に、である。

そして相変わらず、全体に舞台上の演出がサムい。

あれだけ、最近のお笑い芸人を出しておきながら、台本や段取りがきっちりと決まっているせいか、まったく面白くないのである。せっかくのお笑い芸人たちのポテンシャルが潰され、およそこのご時世の笑いとはいえないのだ。

これはいったいどういうことだろう?

コラムニストの小田嶋隆さんのTwitterでのつぶやきを読んで、ハッとした。

「おせち料理は、はるか昔、家事労働が大変だった時代には、正月の間の主婦の調理負担を軽減させる意味で、保存食として意味があったのだろう。でも、冷蔵庫とコンビニと外食産業が完備している現代に、あんなわざわざ手間をかけて食材を不味く加工するみたいなメニューを食べるのは罰ゲームですよ。」

そうか、紅白歌合戦は、おせち料理なのだ。

「わざわざ手間をかけて食材をまずくする加工をする」

これはまさに、紅白歌合戦のことではないか!

いまや、どこに行っても、クオリティの高い音楽やクォリティの高いお笑いを、私たちは容易に手に入れることができる。

紅白歌合戦は、そうしたものが容易に手に入らなかった時代の産物なのだ!

いまやおせち料理が、その意味するところが不明となるくらい奇異な料理になってしまっているのと同様、紅白歌合戦は、もはやその意味するところが不明となり、奇祭化したのである。

つまりここからいえることは、

「伝統とは、奇異化、奇祭化する」

という点に尽きるのである。

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