2016年ベストワン映画
2月28日(日)
前々回の記事で出した「隣の国のコーヒーチェーン店の正式名称」クイズは、誰もわからなかったみたいだ。ということで、今回は私の完全勝利である。
昨日は朝から晩まで都内で仕事。そして今日の午前中も仕事である。
今日は朝8時に家を出て、地下鉄と、その地下鉄に乗り入れている私鉄電車を乗り継いで、1時間半ほどかけて「駅名にカタカナが入っている駅」まで出かけた。…といっても、どこだかわかるまい。
その駅の近くにある工房での仕事が午前中に終わったので、午後、都内で映画を見ることにした。
2015年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した。今年のアカデミー外国語映画賞の受賞も確実といわれている。
いわゆる「ホロコースト」を題材にした映画なのだが、これまでの映画とはまったく異なる手法で描いている。
「ゾンダーコマンド」(アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所で同胞をガス室に送る任務に就くユダヤ人の特殊部隊)の一人が主人公なのだが、カメラは最初から最後まで主人公に密着して、いわば彼の見た世界を映像化している。我々は、「ゾンダーコマンド」として彼が見た収容所の様子を、いわば追体験するのである。それはそれは、凄惨な世界である。
しかし、一見すると、彼の周りで、何が起こっているのか、ワケがわからない。この先どうなるのかも、よくわからない。
実は、これこそが監督のねらいなのである、ということが、見終わってわかった。
「悪夢のような信じられない光景」を見たり、「想像を絶する体験」をしたりしたとき、人間って、こんな感じになるのだ、というのが、よくわかる。
「想像を絶する状況に置かれた当事者」というのは、自分が置かれている状況が理解できなかったり、あるいは理解しようとしなかったりするものなのだ。
主人公がこの映画でとっている行動、というのも、きわめて興味深い。
主人公は映画の中で、ある信念をもって行動をしている。それは、人間の尊厳であるとか、勇気であるとか、そういうものを感じさせる行動である。
だが映画が進むにつれ、「あれ?」と思うようになる。これは主人公の妄想が作り出した、異常行動なのではないのか?と。
しかしやはり思い直す。それははたして異常行動と言ってしまっていいのか?理不尽な状況に追い詰められたときに、人間の尊厳を守るための根源的な衝動が、その行動となってあらわれるのではないだろうか。
極限の状態における人間の心理について、とことん突きつめた映画である。人間の心理とか認識について少しでも関心のある人であれば、見ることをおすすめする。
今のところ、2016年の映画ベストワンである。
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