化かし合いホテル
2月25日(木)
山の中の「幽霊ホテル」について、もう少し書く。
この日の仕事が終わった私たち12名は、何台かの車に分乗し、あらかじめ宿泊の予約していたホテルに向かった。
そのホテルは、町の名前を冠した、その町を代表するようなホテル名だった。おそらく、その名前につられて予約したものと思われる。
ところがカーナビに従って車を走らせていくと、町の中心街からはずれ、どんどん山の中に入っていって、道が狭くなっていく。
最初にホテルに着いたのは、このホテルに宿泊の予約を入れた「隣の国側のリーダー」の車である。
目の前のホテルを見て、リーダーはビックリした。
周りに何もなく、古びたホテルだけがポツンとたっているだけである。食事ができるような場所もない。
「これはまるで幽霊ホテルだ。気味が悪くてこんなホテルには泊まれない!」
と思い、慌ててキャンセルの電話をホテルに入れた。
そのキャンセルの理由というのが、なんとかキャンセル料を払わないですむようにしようと、かなり大胆な嘘の理由なのである。
「同行の車が高速道路で事故を起こして、死者が出たので、今日はとても泊まることができない」
ここまで言われてしまったら、ホテル側もキャンセル料を請求できないだろう、というわけである。
さて、ここまでは前に書いた話。
実はこの日の午前中、つまり、まだそのホテルに「泊まる気満々」でいたときのことである。
リーダーの携帯電話に、そのホテルから何度も確認の連絡が来たという。
「あのう…12名様、今日は本当にお泊まりになるんでしょうか」
「ええ、今日は予定通り12名でそちらに泊まりますよ」
しばらくしてまた、
「あのう…本当に12名様、今日はお泊まりになるんでしょうか」
「ですから、泊まりますって!」
ホテルから何度も確認の電話が入ったのだというのだ。
リーダーは、どうして何度もホテルから確認の電話が入るのか、皆目見当がつかない。
「こんなことは初めてだ」と訝しんだという。
しかし夕方、実際にこのホテルに行ってみてわかった。
我々のように、実際にこのホテルの目の前に来て、
「やっぱりここに泊まるのはやめよう」
と思い、同じように嘘の言い訳をしてドタキャンの電話をしてくる予約客が多かったのではないだろうか?
だからホテル側も、本当に泊まるのかどうか、不審に思って何度も確認の電話を入れたのだろう。
にもかかわらず、ホテル側からしたら、またしてもドタキャンの連絡が来たわけである。
今度はホテル側の立場に立って考えてみよう。
「どうしてうちのホテルを予約する客は、ドタキャンする客が多いのだろう?しかもキャンセルの理由はいつも、予約客に深刻な事態が起こったというものばかりである。ひょっとして、うちに来る客というのは、みんな呪われているんじゃないだろうか?」
ホテル側からしたら、予約客がドタキャンする理由がいつも深刻な内容なので、気味が悪くて仕方がない。
「ひょっとして、幽霊が予約しているんじゃないだろうか?」
不安になったホテル側は、予約した客に何度も確認の電話をかけて、本当に泊まるかどうかを確認するわけである。
繰り返し確認の電話が来るのは、そのせいである。
サアそう考えると、よくわからない。
幽霊なのは、ホテルのほうなのか?客のほうなのか?
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