散髪屋は、人生だ! ~見習いのリーさん~
3月2日(水)
他人様にとってはどうでもいい話なのだが。
いつもは週末に散髪屋さんに行くことが多いのだが、このところ、週末がほとんど仕事がらみで潰れてしまうために、散髪屋さんに行くタイミングがない。
そこで今日の夕方、早めに仕事を切り上げていつもの散髪屋さんに行くことにした。
いつものTさんにチョキチョキと髪を切ってもらっていると、
「こんにちは~」
と背後から挨拶された。
散髪中は眼鏡を外しているので、鏡越しの人の顔がよく見えないのだが、よく見ると、見習いのリーさんである。
リーさんは、まだ専門学校を出たばかりとおぼしき20歳前後の女の子で、ふだんは系列の別の支店で働いているのだが、ごくたまに、人手が足りないとこの店に応援に来るのだそうだ。
リーさんは、ご両親が韓国人なのだそうだが、日本で生まれ育ったので、まったく韓国語が話せない。だが私がよく韓国に行くという話をすると、それなりに親近感をもって話をしてくれるようになった。
不思議なことに、リーさんがごくたまにこのお店に応援に来るそのタイミングに、私がこの店に来るというのである。リーさんに会うのは、これで4度目くらいである。
「鬼瓦さん、これは奇跡ですよ」とTさん。「リーが応援に来るタイミングと、鬼瓦さんがお店に来るタイミングが、これほどピッタリと合っているというのは、他の人では考えられません」
「そうですか?」
「ええ、だって前回鬼瓦さんが来ていただいた日に、リーが応援に来ていたでしょう」
「ええ」
「今日、リーが応援に来てくれたのも、その日以来ですもん」
「そうですか。とすると、3回連続くらいですね」
「私もビックリしました。あ、鬼瓦さんだ!って」リーさんが言った。
「なるほど。私、引きが強い人間なんですよ」
ここまで奇跡が続くと、運命的としか言いようがないのだが、どうも私は単に引きが強い人間らしい。
リーさんにシャンプーを担当してもらったのだが、シャンプーのあいだじゅう、一人暮らしを始めた話だとか、北海道に行ってスノボをした話だとか、映画「Xミッション」がおもしろかった話だとか、気をつかっていろいろと話しかけてくれるのだが、だが情けないことに、「スノボ」はやったことないし、「Xミッション」も見ていないので、気の利いたリアクションをとることもできない。
「鬼瓦さんは、最近何か映画を見ましたか?」
「すごく地味な映画なんだけど、『サウルの息子』っていうハンガリー映画を見ました」
「どうでしたか」
「気持ちが重たくなりました」
「気持ちが重たくなる映画なんですか?」
「ええ」あまりにこちらの話題が貧困なので、だんだん申し訳なくなってきた。
それでも、なんとか話題を合わしてくれるのだから、ありがたいことである。
次も、奇跡は起きるだろうか?
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コメント
(「2016年ベストワン映画」のコメント欄から続く)
てなことを、どうして長々と書いたかというと、勿論、床屋トークのネタに使ってもらいたいからである。
大体、「日本一クド過ぎるブログ」(当社調べ)を連日お書きの有力ブロガーさんが、どうして話のネタに困るのか。
一人暮らしと言えば、私も前の職場では一人暮らしだったんです。単身なら引っ越しが簡単かと思ったんですが、持って行く本が3tトラック一台分になっちゃったので大変でしたよ.. とか
スノボと言えば、知り合いがスキー合宿に行ってるんだけど、なぜか、かんじきを履かされて、樹齢300年のブナ原生林の中で「八甲田山ごっこ」させられているんだって、とか
最近見た映画と言えば、バス映画くらいかな。リーさんは、次回のマドンナって誰がいいと思います? とか。
というか、床屋さんなら一日中、店内にラジオを流しっぱなしにして仕事してるんだから、ナタリーの退社でさらに混迷を深める「どうする・どうなる4月からのTBSラジオ」ネタで攻めれば、もお完璧でしょ。
僕なんか、もう「ゆうロス」になっちゃって。
わたしも、パカパカ行進曲が終わっちゃうのガッカリなんですけど。でも、最近「小沢昭一的ココロ」のパロディー・ブログを見つけてたんで、心が落ち着いてきて。あれ、誰が書いてるのかなあ...
(ギクッ)
というように「床屋さんと客の会話」コントの完全台本を書いて、次回の散髪に臨んでくださいね。
投稿: ネタ元こぶぎ | 2016年3月 5日 (土) 00時17分